渇望
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「きゅうん…」
鳴き声までかわいいこの動物は一体どうしたらいいのか。
頬を摺り寄せるとぺろぺろと舐めるそれ。
抱きしめるとかすかに香る薔薇の香り。
この生き物は体臭まで素敵だ。
栄子の頭の中にそれが彼だという事はすっかり忘れ去られようとしていた。
「そろそろ冷めたかな。さぁ、猫飯召し上がれ、狐ちゃん。」
忘れる事もなく、狐用に作ったそれを食べさせようとする栄子。
「……。」
「…あれ、食べないの?嫌い??猫飯…。」
眉を寄せしゅんとする彼女。
狐は心の中で深くため息をつき、少し躊躇しつつも、そのお皿の飯に口をつける。
ただ、蔵馬は犬でも猫でもない。
狐ではあるが、妖怪で人間でもある。
自分からその行動を取っているとはいえ、やはり彼女にさせられているような気にさえなってくる。
そんな狐をじっと見る彼女は、何かに気付いた様に台所へ行き醤油を持ってくる。
「…味薄い?あんまりおいしくなさそうだもの…。」
そういう問題ではないだろうに。
床のお皿に顔を突っ込んでいる事自体が彼にとっては屈辱以外の何ものでもなかった。
ただそれが彼女の願いだから聞くだけの話。
栄子は醤油をとぷとぷと飯にかける。
…いやかけすぎる。
「はいっ召し上がれ!」
にっこりと笑う彼女の視線の先には、ひたひたの醤油まみれの猫飯。
狐はさすがにげっそりとした表情で首を振った。
限界だとばかりに、狐の体が金色に光りだす。
もう口に運べるレベルでなくなったのだろう。
その様子に栄子は目を見開き「まだ戻っちゃだめ!!」と慌てて抱きつく。
その拍子に飛び散る猫飯。
彼らに降り注ぐ醤油がたっぷりとかかった鰹節とご飯。
「…あ…」
カラン…と醤油を撒き散らしお皿だけが床の上を回る。
彼女は一体どんな蹴り方をしたのか。
しっかりと彼女の頭には猫飯がかかり、狐の体にも沢山の醤油が飛び散っていた。