あなた達の彼女
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星空が綺麗な、雲一つない夜
栄子は秀一のマンションのベランダから望遠鏡を覗き込み星座を探していた。
「あった!はくちょう座発見!!」
わぁっと手を上に上げ喜ぶ栄子。
部屋の中では、そんな栄子の姿をソファーに腰掛け眺める秀一。
片手にコーヒーを持ち、仕事の休憩だろうか、テーブルには書類が置かれている。
「秀ちゃん!秀ちゃんも見てみてよ!」
栄子はこっちこっちと望遠鏡を覗き込んだまま秀一に手招きをする。
「…栄子、もう一時間位見てるよ?風邪ひくから一旦入ってきなよ。それか上着きて。」
返ってくる言葉は案の定、心配してくれている彼の優しい言葉。
キャミソールにショートパンツ姿の栄子。
さすがに夏といえど夜は涼しい。
だけど栄子にとっては今それどころではなかった。
「大丈夫だもん!それより今大事な所なの!早くきて。」
全く聞く耳すら持たない彼女に、へぇ…と、意地悪そうに目を細める秀一。
今宵は満月。
雲一つない静寂な夜。
ベランダの床がきしりと音を立てる。
「もうっ、やっと来たのね!?秀ちゃん、おそ―…」
そう言って振り返ろうとした栄子だったが、後ろから自身の腰に腕が回されたのを感じ思わず硬直した。
たくましく長く白い腕。
背中に感じる人よりは少し冷たい体温。
さらっと肩にかかる銀色の長い髪の毛。
そして変わらない薔薇の香り。
「あっ…あの…」
まだ彼の妖狐の姿に慣れていない栄子は、同じ秀一なんだと頭では分かりつつも、どうしても緊張してしまう。
ただでさえ、秀一の姿でも甘い雰囲気には心臓が飛び出る位のどきどきものなのに、いきなりこれはないだろう。
引っ付きすぎだ。
「はっ、離れてください!!」
真っ赤になり、泣きそうになるのを必死にこらえながら、やっと出た言葉。
しかしそんな彼女の抗議の言葉などむなしく、回された腕に力が入りさらに引き寄せられる。
彼の鼓動が聞こえる位に逞しい胸板を背中に感じ、彼の息が耳にかかる。
「なぜだ?」
甘く熱い息が耳にかかり思わず身震いをしてしまう。
見てもいないのに彼の色気にくらくらしてしまう栄子はすでに茹蛸状態。
「だっだめです!…一杯一杯になるんで…はっ離れてください!」
このままだと自分の身が持たない。
「意地悪な事をいうじゃないか…」
どっちが意地悪なのだ?と心の中でつっこみを入れる栄子の耳につぅっと舌を這わす妖狐。
「…やっ…」
「そんな格好をして煽っておきながら、俺が逃がすと思うか?」
妖しく耳元で囁かれ、腰にあった腕の片方が撫でるように上に上がっていく。
「~~~~~!!!」
「力を抜け、栄子。」
首筋に舌を這わす狐。
無造作に動く慣れたような狐の手。
それがキャミソールの下から入りそうになった時だった…
一気に栄子の体の力が抜け体重が狐にかかる。
崩れそうになる柔らかな体を支え狐はため息を一つ。
「…また、か。」
刺激が強すぎたのか、気絶してしまうとは。
上気した桃色の頬に、涙でかすかに濡れたまつげ。
少し開いた赤い唇。
それに吸い寄せられたように重なる狐の唇。
そして惜しむかのようにそれを舌で舐める。
自分の言うことを聞かない彼女にちょっとしたお仕置きのつもりで、いまだに慣れてくれない妖狐になってみたものの、欲に忠実になってしまう妖怪ゆえの本質か、それとも人間の秀一以上に理性が効かなくなってしまっている為か、彼女に触れた瞬間冗談のつもりが本気になってしまった。
狐はいささかやりすぎたなと反省した。