君と重ねた恋
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夕日が二人の影を長く映す。
影遊びのつもりだろうか、栄子は、えいっ!と秀一の影に飛び乗ろうとして彼に避けられる。
「うぅっ~…」
「まだまだだね。」
「秀ちゃん、いつも早いもん!もっとゆっくり逃げてよ~!」
「栄子が遅いんだよ。」
「秀ちゃんのいじわる!!」
ぽかぽかと自分の肩を殴る栄子に、秀一は楽しそうに笑う。
そんな彼の表情を見て栄子は殴る手を止める。
「…栄子?」
なにやら様子が変だ。
栄子はいきなり俯いて何やら考え出した。
ん~…と頭を傾げる。
そしてふと秀一と目が合うと栄子は口を開けた。
「秀ちゃん、喜多嶋さんとはどうなったの?」
目を見開く秀一。
「…好き、なんだよね?」
じっと見る栄子の少し寂しそうな瞳。
秀一の翡翠の瞳が揺れる。
「ずっと前、二人でいる所たまたま見たの。…秀ちゃんすごく優しい顔してた。だから…好きなんだって思って。秀ちゃん、私力になるからね!寂しいけど…私だって…」
「もう好きじゃない。」
ピシャリと言葉を遮る。
栄子は彼の声色がいつもより冷たい事に驚いた。
そしてさらにショックを受けたのは怒りを含んだその翡翠の瞳であった。
言ってはいけなかったのかもしれない。
誰にも知られたくなかったのかもしれない。
好奇心と自分から離れていく寂しさで出た言葉。
兄の様で親友の様な彼。
失いたくなくて、独占されたくなくて、でも彼が幸せになるなら力になりたくて、複雑な心境の中、先程の楽しそうな彼の表情を見て思わず出てしまった。
栄子は後悔した。
「ごっごめんなさい。秀ちゃんこういうの嫌だったよね!私いつも秀ちゃんに頼ってだかりだったから、だから…」
秀一の顔を見るのが怖くて栄子は俯きながら謝る。次第に目元が熱くなっていく。
(だめだ…泣いちゃう。)
普段怒らない人が怒ると怖いと聞くが、それよりも嫌われたのではないかという不安が胸に広がる。
「…お願い…嫌いに、ならないで、秀ちゃん。」
かすれた声。
涙がこぼれ落ちないように栄子は秀一の様子に怖々ながらも顔を上げた。
目に一番に入ったのは彼の瞳。
それは先ほどの怒りを含んでいたものとは全く違っていた。
熱を帯びた翡翠の瞳。
それが栄子の瞳を捕らえる。
「似ていたんだ。」
秀一の指が栄子の頬をなぞる。
頬を流れる涙。
「泣かないで。」
近づく秀一の整った顔。
頬に生暖かい湿った感触。
(何…してるの?)
はっきりしない頭で、目の前の翡翠の瞳を見る。
そして、栄子の頬、鼻、額、目元に順に優しく口づける。
「秀…ちゃん?」
さすがに段々と状況がわかってきた栄子は彼の胸を押し返そうとするが、その手まで握られ秀一の方へ寄せられる。
「君とかぶせてた。」
両頬に手をあて顔を固定される。
熱を帯びた翡翠の瞳。
形の良い濡れた唇。
それらがゆっくりと近づく…