第16話 禁じられた術
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気持ち良さそうに眠る栄子の顔。
それを見て一息つく飛影。
秀一の部屋のベッドに栄子を運んだ彼は、喫茶店での狐との話を思い出していた。
『反魂の術…だと?』
今しがた狐の口から出た言葉に飛影は思わず復唱する。
『それしか考えられないんです。被害者の女性達の魂は食事ではなく…形代を保つための生贄。体がすでにない鴉はそうするしか生きていく術がない。』
数年前に死んだ肉体が使えるわけがない。
狐はそう言うとコーヒーカップに口をつける。
生贄に魂だけではなく、首から上を吹き飛ばす必要があるのか。必要なのが肉体ではなさそうな事件の背景に奴の異端性を感じる。
『名前は聞いたことはあるが…禁術なんてそうそう使えるもんじゃないぜ。扱える奴にもそれ相応の代償が必要だろう?』
禁術とはそういうもの。
それだけ危険で禁止されているもの。
霊界で保管されている禁術もほんの一部だ。
『反魂とは、この世に一度でも生を受けたものを生き返らせる術。しかし代償は大きい。永遠に生贄を必要とし、それを怠り朽ちるのなら魂は消滅し二度と転生する事は適わない。…術者にはかなりの時間と労力、そして引換えになる力の高い者の命が必要。』
どちらにせよ人や妖怪の生死を振り回す術だ。
狐はそう言うと目を伏せた。
『ふん、なるほどな。…で、栄子が狙われる理由は?鴉と面識があるのか、あいつ。』
先程、以前奴に連れ去られそうになっていたと狐から聞いた飛影だが、それだけでは納得がいかなかった。
それだけならば他の女性達と変わらず生贄の可能性が拭いきれないからだ。
なのに、狐はそうではないと言いたげだ。
『…いえ、鴉とは面識がありません。』
ならなぜ…。
なかなかその後の言葉を続けない狐。
話す気がないのか…、飛影の眉間にしわが寄る。
『ふざけるなよ…術者ももう目星がついてるんだろう?』
『……。』
『…??どうした、いえんのか?俺にあいつの護衛を頼むのにそこもだんまりか?』
『いえ…それはまだなんです。それに、俺の推測過ぎてまだ確かな事は言えない。』
申し訳なさそうに翡翠の瞳を揺らし苦笑する秀一に、飛影は目を細めた。
推測だと?
…あいつは、知っている…
なにを戸惑うんだ。
苦笑するその翡翠の瞳の奥に見えた狐の怒り。
それは一体何を表すのか。
ベットで眠る彼女の顔にかかる髪を指で戻す。
それでもさらさらと落ちてくる髪の毛に飛影は指を絡めた。
「おまえ、本当に面倒臭い女だな。」
すやすやと気持ち良さそうに眠る彼女を見て飛影は大きなため息をついた。