第16話 禁じられた術
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森の中を駆け抜け、崖を飛び降りる飛影。
降りた場所は崩れかかったビルがぽつんとあり、少し離れた所にライトのついた車が一台。
「…結界があったのか。」
ちっと忌々しそうに舌打ちをすると、 外からビルの窓に飛び乗る。
飛影は珍しく焦っていた。
一週間程前。
「それは…本当か?」
「えぇ、被害者の女性達が彼女に似ています。遅かれ早かれ彼女も狙われる。」
カフェに呼び出された飛影。
昼間のそこは女性やカップルに溢れている。
初めて頼むコーヒーには少し感動するものの、もう少し場所を考えろと不機嫌になっていた。
しかもこの話はさらにテンションを下げさせるものだった。
俺に栄子を守れと狐は言う。
自分は調べ物があるからしばらくは彼女の側にいれないと、勝手な狐だ。
「コエンマの言っていた妖怪か。女達はそいつの餌だったというわけか。」
「…餌、そうとも言えますね。」
「それにあいつが狙われていると?餌なんざそこら中に転がっているぞ。」
そんなに注意するほどではないのでは。
飛影は呆れた様に息をつき目を細める。
こいつの過保護にはついていけん。
コーヒーを飲んでこの場をさっさと去ってやろうと考えるが…
「栄子自身がターゲットだとしたら?」
「…なんだと?」
「その可能性が高い。好みの女性を狙っているだけか…あるいは彼女自身。」
狐の言い方は後者の線が濃いと言いたげだ。
「仮にそうだとしても、人肉を好む奴なんてたかが知れてるぜ。おまえの事だ、日頃からあいつに色々持たせているんだろう?」
下手に手をだすと、馬鹿な妖怪は一瞬で灰になるようなものだ。
この狐は大事な物を守るためには手段は選ばない。生易しく生かしたりなどしないだろう。
「…妖怪はクエストクラスです。飛影。」
「……。」
「そして奴は食人鬼の類でもない。」
「…どういう事だ?」
クエストクラスで食人鬼の類でもない妖怪がなぜ人を食らうのか。
普通は魂を好んで食うはずだ。
「……奴は…」
「久しぶりだな…おまえは、飛影…だったか。」
暗い室内に、窓から入る月明かりに照らされ奴の双方が妖しく光る。
切れ長の黒真珠のような瞳。
漆黒の艶やかな長い髪。
品の良さそうな口元は孤を描く。
まさしく暗黒武術大会で蔵馬が倒した妖怪。
「…鴉。」
眉を寄せ舌打ちをする飛影。
「ふふ、覚えていてくれたか。しかし、俺の予想は狐が来るとおもったんだが…。」
残念だ…と面白そうに笑う。
ずっと栄子に気を配っていた飛影だった。
妖気が少しでも彼女に近づけばすぐ分かるようにと注意していたにも関わらず、この男は先手を打ったらしい。
まさか妖気を漏らさず人間を操るとは。
以前の鴉では出来ないことだ。
(栄子は…下か。)
鴉の妖気が充満する中で、かすかに感じる彼女の気配を下の階に感じる。
安堵の表情を浮かべる飛影に鴉は微笑む。
「心配しなくても何もしていない。」
「…なぜ栄子を?」
すぐさま下に行って彼女の様子を確かめたい飛影だが、この鴉には隙を見せれない。
以前とは違う。
妖気の質や量は以前と大して変わってないものの何か異質なものを鴉に感じてしまう。
「狐はどこまで分かっているんだ?おまえが来て驚かないという事はもうわかっているのか?」
飛影の質問には答えずただ面白そうに話す。
「貴様…」
「まぁ、いい。狐に伝えておいてくれ。」
たんたんと自身の事だけ話す鴉に飛影は苛つくものの、次の一言でさらに苛立ちが増した。
「栄子は俺のものだ。あいつの血も体も心も全てな。」
キーン-…
風が舞う。
鴉の長い髪がなびく。
飛影の赤い瞳が残像を残す。
「好戦的なのはおまえもだったな。」
腕で飛影の剣を受けながら鴉は嬉しそうに目を細めた。
飛影は舌打ちし、後ろに飛び距離をあけると再び剣をかまえる。
「強くなったな…驚くほどだ。」
鴉はふふふと笑い、腕から流れる血を舐める。
「だけど、俺には勝てない。」
黒真珠のような瞳を細め、口角をあげる。飛影はますます苛立ち、眉を顰める。
「あいつに近づくな、次は本気で行くぞ…。」
剣の先端を向け言い放つ。
「…おまえもか。…相変わらずあいつは妖怪に好かれる女だな。」
少し笑いそう言うと鴉は背を向け歩き出した。
「どこへいく?」
この苛立ちはどうしたらいいのか。
簡単に苛つかせる鴉と自分との相性は悪いらしい。
「余計な力を使ってられん。…栄子をほって置いていいのか?」
「……。」
「ではな。」
鴉が立つ地面から風が吹き荒れる。
血生臭い妖気に火薬の臭い。
鴉は姿を消した。
「やりにくい奴だ…。」
飛影は忌々しそうに舌打ちをした。
降りた場所は崩れかかったビルがぽつんとあり、少し離れた所にライトのついた車が一台。
「…結界があったのか。」
ちっと忌々しそうに舌打ちをすると、 外からビルの窓に飛び乗る。
飛影は珍しく焦っていた。
一週間程前。
「それは…本当か?」
「えぇ、被害者の女性達が彼女に似ています。遅かれ早かれ彼女も狙われる。」
カフェに呼び出された飛影。
昼間のそこは女性やカップルに溢れている。
初めて頼むコーヒーには少し感動するものの、もう少し場所を考えろと不機嫌になっていた。
しかもこの話はさらにテンションを下げさせるものだった。
俺に栄子を守れと狐は言う。
自分は調べ物があるからしばらくは彼女の側にいれないと、勝手な狐だ。
「コエンマの言っていた妖怪か。女達はそいつの餌だったというわけか。」
「…餌、そうとも言えますね。」
「それにあいつが狙われていると?餌なんざそこら中に転がっているぞ。」
そんなに注意するほどではないのでは。
飛影は呆れた様に息をつき目を細める。
こいつの過保護にはついていけん。
コーヒーを飲んでこの場をさっさと去ってやろうと考えるが…
「栄子自身がターゲットだとしたら?」
「…なんだと?」
「その可能性が高い。好みの女性を狙っているだけか…あるいは彼女自身。」
狐の言い方は後者の線が濃いと言いたげだ。
「仮にそうだとしても、人肉を好む奴なんてたかが知れてるぜ。おまえの事だ、日頃からあいつに色々持たせているんだろう?」
下手に手をだすと、馬鹿な妖怪は一瞬で灰になるようなものだ。
この狐は大事な物を守るためには手段は選ばない。生易しく生かしたりなどしないだろう。
「…妖怪はクエストクラスです。飛影。」
「……。」
「そして奴は食人鬼の類でもない。」
「…どういう事だ?」
クエストクラスで食人鬼の類でもない妖怪がなぜ人を食らうのか。
普通は魂を好んで食うはずだ。
「……奴は…」
「久しぶりだな…おまえは、飛影…だったか。」
暗い室内に、窓から入る月明かりに照らされ奴の双方が妖しく光る。
切れ長の黒真珠のような瞳。
漆黒の艶やかな長い髪。
品の良さそうな口元は孤を描く。
まさしく暗黒武術大会で蔵馬が倒した妖怪。
「…鴉。」
眉を寄せ舌打ちをする飛影。
「ふふ、覚えていてくれたか。しかし、俺の予想は狐が来るとおもったんだが…。」
残念だ…と面白そうに笑う。
ずっと栄子に気を配っていた飛影だった。
妖気が少しでも彼女に近づけばすぐ分かるようにと注意していたにも関わらず、この男は先手を打ったらしい。
まさか妖気を漏らさず人間を操るとは。
以前の鴉では出来ないことだ。
(栄子は…下か。)
鴉の妖気が充満する中で、かすかに感じる彼女の気配を下の階に感じる。
安堵の表情を浮かべる飛影に鴉は微笑む。
「心配しなくても何もしていない。」
「…なぜ栄子を?」
すぐさま下に行って彼女の様子を確かめたい飛影だが、この鴉には隙を見せれない。
以前とは違う。
妖気の質や量は以前と大して変わってないものの何か異質なものを鴉に感じてしまう。
「狐はどこまで分かっているんだ?おまえが来て驚かないという事はもうわかっているのか?」
飛影の質問には答えずただ面白そうに話す。
「貴様…」
「まぁ、いい。狐に伝えておいてくれ。」
たんたんと自身の事だけ話す鴉に飛影は苛つくものの、次の一言でさらに苛立ちが増した。
「栄子は俺のものだ。あいつの血も体も心も全てな。」
キーン-…
風が舞う。
鴉の長い髪がなびく。
飛影の赤い瞳が残像を残す。
「好戦的なのはおまえもだったな。」
腕で飛影の剣を受けながら鴉は嬉しそうに目を細めた。
飛影は舌打ちし、後ろに飛び距離をあけると再び剣をかまえる。
「強くなったな…驚くほどだ。」
鴉はふふふと笑い、腕から流れる血を舐める。
「だけど、俺には勝てない。」
黒真珠のような瞳を細め、口角をあげる。飛影はますます苛立ち、眉を顰める。
「あいつに近づくな、次は本気で行くぞ…。」
剣の先端を向け言い放つ。
「…おまえもか。…相変わらずあいつは妖怪に好かれる女だな。」
少し笑いそう言うと鴉は背を向け歩き出した。
「どこへいく?」
この苛立ちはどうしたらいいのか。
簡単に苛つかせる鴉と自分との相性は悪いらしい。
「余計な力を使ってられん。…栄子をほって置いていいのか?」
「……。」
「ではな。」
鴉が立つ地面から風が吹き荒れる。
血生臭い妖気に火薬の臭い。
鴉は姿を消した。
「やりにくい奴だ…。」
飛影は忌々しそうに舌打ちをした。