第15話 黒真珠と血の香り
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いつの間に寝ていたのだろうか。
懐かしい夢を見た…。
会えたくても会えないから深層心理から出てきたものだろうか。
とても暖かくて心地よい思い出。
まだ頭を撫でられた感覚が残っている気がする。
竜崎の車での揺れが気持ちよかったのか、よほど疲れていたのか。
すぐ側には今にも崩れ落ちそうな壊れかけのビル。周りには瓦礫の山がちらほらとある。
(ここは…どこ?)
ぼんやりとする頭で記憶を遡るものの、竜崎の車に乗ってからの記憶がないのだ。
眠たかった記憶もなければ、乗った直後までのそれしかない。
隣にはいるはずの竜崎の姿もなく、車はエンジンがかかったまま。
(トイレだろうか…)
まさかこんな気味の悪いところで、とは思うものの、もしかしたら我慢できなくて仕方なくかもしれない。
彼女はあるあると、一人納得するともうしばらく待つ事に。
辺りはすでに暗く車のライトの光だけが目立つ。
改めて回りを見渡し何もないなぁと息をついた時だった。
車の前方から向かってくる人影に一瞬体が強張ったものの、見知った人影だと分かると力が抜けた。
彼は自分が起きているのに気付くと、にっこりと笑いこっちこっちと手招きをする。
降りて来いと言うのだろうか。
こんな所にレストラン??
まさかここがレストラン??
ふと車の時計を見るとすでに23時を過ぎていた。
あれから5時間は過ぎている。
ここは近場ではない。
おかしい。
降りてこない自分に痺れを切らしたのか、助手席のドアを竜崎は開ける。
開けられた瞬間香る香り。
知ってる香り。
血と火薬の香り。
身の危険を感じ閉めようとするドアを離さない彼。
「大丈夫だよ」とにっこりと笑う。
その笑顔はいつもの彼そのままで危険だと思わせるものではない。だが、頭では警報が鳴っている。これ以上行ってはならないと…。
それでも閉めようとドアを引っ張ると濃くなる火薬の香り。
そして…
「この者が死んでもいいのか?」
彼の口から発されたのは聞いたこともない低い男の声だった。