第2話 痛みと優しさ
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「…誰?…こないで…」
女性の怯えた声が廃虚のビル内に響く。
彼女はコンクリートの破片が散らばった廊下に座り込んでいる。腰が抜けて立てないのか、何かに怯え後ずさる。
足や尻に破片がすれて、じゃりじゃりと音がする。
なぜこんな場所にいるのか。
自分は先ほどホテルにいた。
取引先との打ち合わせでホテルのロビーのソファで待っていた。
なのに…
気がつけばこの暗闇の廃虚にいたのである。
目の前には黒い人影。
記憶を辿ろうとする。
だが目の前の人影が自分の思考を遮った
カツカツと近づいてくるそれの姿が窓から差し込む月明かりで露わになる。
「おまえ、年はいくつだ?」
とても威圧的な声。
「……にじゅう、に…」
彼女は目を見開き、止まる。
月明かりに照らされたそれは、異様なまでの黒づくめの男。
切れ長に妖しく輝る黒真珠のような瞳、綺麗に通った鼻筋。艶やかになびく腰まである長い黒髪。
女性は時が止まったかのようにその男に見惚れる。
さっきまでの恐怖は嘘の様だ。
彼の姿に胸が高鳴っている。
「…あなたは…誰?…そういえばホテルであなたに声をかけられた様な気もする…」
男は、感情のない瞳でこちらを見つめる。
女性はそれに思わず頬を赤らめ、ここが暗闇でよかったと先程の恐怖など忘れさり調子の良い事を考える。
「……おまえ、名前はなんだ?」
「わっわたし!?わたしは…」
男は彼女の次の一言に顔を歪める。
また違ったか、と肩を落とした。
「…悪かったな」
そう謝まると、男はその場を去ろうとした。
「まっ…まって!」
女性は思わず止める。
「誰を…探しているの?私でよかったら力になろうか?」
おそるおそる言う女性に、男は、ほぅ?と目を細めた。
彼女ははっとして、両手で自分の口に手を当てる。
名前も何も知らない人に何を言っているんだろうか。
思わず引き止めるのにそんな言葉が出てしまっていた。
だが嫌ではない。
むしろもう少し一緒にいたい。
彼に近づきたいと思う。
「…探してくれるのか?」
男は女性の側まで来ると顔を至近距離で見つめる。
女性は一気に真っ赤になり、うつむいた。
男はそれを見ると
ニヤリと笑い、妖しく瞳を光らせた。