第15話 黒真珠と血の香り
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全然会えない幼なじみ。
待ってしまう彼からの電話…。
そして、痺れを切らした栄子が彼の母親から聞いたのは出張という答えだった。
「先輩…わたし、なんかすんごく腹が立ちます!!」
グラスに入っているチューハイを一気に煽る。
そして近くにいた定員に「同じものをおかわり!!」と叫ぶ。
「あらあら、そんなに一気に飲んだら吐いちゃうわよ?」
品良く笑う中原の頬もすでに少し赤い。
「飲まないとやってられません!!出張なんて聞いてない!!それにいつまでかも分からないかなんて…。」
「それは、そうでしょ。彼女でもなんでもないんだから。」
困った酔っ払いね…と苦笑する。
その言葉に唇を尖らせ唸る栄子。
だが、確かにその通りのため何も言い返せない。
「出張なんだから仕方ないわ。会社や職柄によって期間なんて色々なんだから、根気良く待つしかないわね。運よければ今日だって会えるかもしれないし。」
二人は秀一の会社の近くにある居酒屋にいた。
一度来たこの居酒屋を二人はひどく気に入ってしまい度々出向くようになってしまった。
もちろん彼にも会えるかもしれない。
そんな期待も抱いて。
あれから一週間がたっていた。
「…でも、電話くらいほしいわよね。」
その言葉に栄子は顔を上げ、目を潤ます。
「…もう、無理なんでしょうか?」
これだけ音信不通など今までなかった。
不安が胸をよぎる。
本当に嫌われたのかもしれない。
「無理じゃないわ。そんな顔しないの。」
よしよしと頭を撫でられ、思わず目を細めると溜まっていた涙が一筋流れた。
「…よく泣く子ね。彼も大変だわ。」
そうだ…
本当に泣き虫だと思う。
彼はどんな私も受け入れてくれていた。
だから、泣くことを我慢する事に免疫がない。
彼はいつも辛いことや苦しいことがあれば優しく包んでくれていた。
私はそれにいつも甘えていた。
会えないと会いたくて仕方がない。
泣き場所を探してしまう。
それだけ自分は依存していたのだと改めて分からされる。
「こらこら、そんなに泣かないの。」
苦笑し、差し出されるハンカチを受け取り流れる涙を拭く。
「すみません…」
このままじゃいけない。
次に彼に会ったら泣かないと心に誓ってみる。
側にいてくれた事が当たり前で、いないとだめになってしまいそうだ。
こんな自分じゃ呆れられても仕方がない。
「私…メール打ちます。」
「あら、打ってなかったの?」
意外そうに目を見開く。
「いつも電話か直接家に行ってたから。メールっていってもいつも用件だけだったんです。」
なんといってもお隣さん。
今は違うものの、なにかあれば目と鼻の先だった為、メールを打つより早く会えた。
「そうね…うってみなさい。」
よしよしと再び頭を撫でられ気持ちよくて目を細める。
頭を撫でられる事は慣れている。
それも…
元々は彼がよく撫でてくれていたから。
ひとつひとつが彼に繋がる。