第14話 人間と妖怪
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一連の出来事を静かに見ていた幻海は、ふうっと息を吐くと…
「幽助。別に栄子は引かないさ。この子は特異体質で魔界に行ったこともあればお前達が妖怪であれなんであれなんとも思わないような子だ。」
「……それは、」
そうかもしれない。
それはわかっているのだが、このままだと彼女に幼なじみの周りに妖怪率が高いという事がばれてしまう。
それは幼なじみさえも妖怪かもしれない、という疑問には結びつかないだろうか…。
ばれても問題はないとは思っているものの、以前蔵馬に止められた事が脳裏によぎる。
しかし幻海がここまで言ってしまったということはもう後の祭り。
しっかりと聞いている栄子の瞳がだんだんと見開いていく。
「…幽助も、妖怪??」
「あ、あぁ…まぁな。始めは人間だったんだけどな。」
開き直りへへへと笑いながら頭をかく。
「…へぇ。そうなんだぁ…」
瞳を輝かせ幽助の体を見ながら彼の周りを回り始める。
そして所々つっついてみる。
「おい…やめろ。」
「…飛影もそうだけど、人間と変わらないよね。見た目。でも、あのタフさは確かに妖怪並だわ。」
うんうんっと腕を組み頷く。
そしてしばらく何か考えた後、探るような不安げな視線が幽助に向けられた。
「…もしかして、螢子も??」
「いんや、あいつは人間。」
「そっかぁ…」
明らかにほっとしている彼女。
仲の良い友人故だからだろうか。
自分と同じだという事で安心しているように見える。
先日友人達で飲み明かした時に出た彼女の発言。
本人はこの様子から見るに全く覚えていないようだが…あの時も彼女は自分の事を妖怪だと理解して発言していたのかは定かではない。
妖怪と人間が一緒に生きられる方法。
どれだけ魅力的で望むことか。
しかし、あの時の彼女はなんせ酔っ払い。
覚えているはずもない。
今の彼女に聞いた所で答えは返ってくるはずもないが…。
「…なら、秀ちゃん-…」
「!!…」
幽助は少し目を伏せた。
これ以上はいいのだろうか。
本人の口から話すべきだ。
これに自分は責任は取れない。
「…秀ちゃんももちろん知ってるんだよね。その事。」
幽助の心配とは別に彼女の口から出た言葉は幼なじみを微塵も妖怪だと疑わないそれだった。
幼い頃からずっと側にいて、一緒に成長してきたのだから仕方がない。
幽助はあの時なぜ彼が言えなかったのか。
それを今改めて理解した。
「いいかげんにしろ。早くやるぞ。」
そしてその会話を区切る様に死々若丸の不機嫌な声が振る。
「あっ、休憩してからにしたら?すぐお茶入れてくるから!!」
栄子はそうだったとばかりに急いで台所に走っていく。
途中振り返り「魔界の話、後で聞かせてね!!」と一言告げて。
「…ばぁさん…」
「なんだい。」
「蔵馬は栄子に自分の事知られたくないみてぇなんだ。」
「…そうだろうね。幼なじみだからね。」
幻海は少し微笑み目を伏せる。
「別に蔵馬が言いたくなければ言わなくてもいいんじゃないかい?」
「…さっきのでいつばれるかわかんねぇよ。」
呆れたように呟く幽助。
「それはそれだ。ばれるときはばれる。」
「ばぁさん、それは無責任じゃぁ…」
「側にいるからには覚悟しておくリスクだ。それに妖怪だろうが人間だろうかいいじゃないか。他人を思う気持ちも理解しあえる気持ちもある…、違う部分は大きくても中身が同じだよ。…違うかい?」
遠い目。
幻海は目を細め空を見上げる。
一緒に戦った仲間。
妖怪に身を捧げた友人。
幻海は目を伏せると一息つき、わたしも茶でもいただこうかね…と家に入っていく。
幽助はその後ろ姿を見て、複雑な想いで苦笑する。
一緒にいたければ受け入れてほしいのならば、そうすればいい。
自分もそうだった。
簡単なことではないし、覚悟はいる。
先日の蔵馬の様子を見るからに鈍い自分でも彼の心情は理解できた。
(そういえば、あいつがあんな風になるのなんて初めてみたな…)
「…あいつ、何考えてんだろな…」
ぽそりと呟く幽助。
一体彼はどうしたいのか、それは同じ立場の幽助でも分からない。
さて言い訳でも考えるか、と修行だと騒ぐ二人を無視しタバコに火をつけた。