第14話 人間と妖怪
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「お…そうだ、おまえにこれをやろうと思ってたんだ。」
ふと何かを思い出したように幻海は箪笥から箱を取り出す。
それを栄子の前に置くと、空けてみなと笑う。
「…これ…」
開けた先にあるのは小さなピンクの石のついたアンティーク調のネックレスだった。
「…ルビーだよ、おまえにやるよ。こないだ訪問販売っていうのかい?あれに引っ掛かっちまってね。いやに強引で、仕方なしに買ったんだよ。わたしゃつけないからあんたがつけな。」
「え…で、でも…」
「おや私の好意が受け取れないのかい?ばばぁのプレゼントくらい素直に受け取りな、あんたはわたしの孫みたいなもんなんだから。」
「…おばぁちゃん…。」
思わず赤くなる栄子。
嬉しくて視界が潤む。
そんな時だった。
どどーーーんっ
家が揺れる。
驚き思わずそれを落としそうになり慌てて掴む。
「…え、なっ、何?」
「あの、馬鹿共が。家を潰す気か。」
幻海は舌打ちするなり立ち上がり、庭につながる戸をガラガラと開ける。
「こら、馬鹿共。庭でやるんじゃないよ!手入れした草木がつぶれちまうだろ。」
ネックレスを首に掛けながら幻海の後ろから顔を覗かせる栄子。
庭には砂煙の舞う中、痛そうに頭を押さえる幽助に、砕け散っている木々たち。
「ったぁぁっ…あいつら腕上げやがって。いちちち…って、あれ、ばぁさんどうしたんだ、こえー顔して。って、おぉっ栄子じゃねぇか!!遊びにきたんか!?」
明らかに重体レベルの状況。
栄子はぽかんとしながらも、さすが幽助だと一人納得する。
彼は痛そうに頭を一瞬さすっただけで栄子の姿をみつけるなり嬉しそうにすぐ前まですっ飛んできた。
「幽助、タフなんだね。」
「そこかよ。」
わははと笑う彼。そして相変わらず挨拶のように頭をわしわしと撫でられる。
「もう……ってなにしてんの??」
傷だらけの彼、しかし瞳は爛々と輝いている。なにやらすごく楽しそうだという事だけは栄子にも分かる。
「あぁ…とな、今度格闘技の大会があってな。俺それに出るから修行してんだ。」
「へぇ…修行しにきてたんだ。そういえば昔おばぁちゃんに習ってたって言ってたものね。」
実際の修行は見たことはない。
栄子が幻海と出会う前だったという事は幼なじみからも聞いたことがある。
「まぁな。今はその…早く言えばばぁさんの弟子と戦ってるというか…、なんというか…」
「やめとくれ。いつの話だい。たまにこっちに遊びにきているだけだよ、あいつらは。」
やれやれと隣でポーズをとる幻海。
「ねぇ、その大会っていつなの?」
「あと二ヵ月後だ。次はぜってぇ優勝してやんぜ!!」
にしししと歯を見せ笑う彼。
栄子の瞳はだんだんと輝いていく。
「螢子は行くの?応援。」
「あぁ…まぁ、場所にもよるけどな。」
瘴気が薄い場所だったら…
ポツリと呟く。
「ふうん…。そっか。そっかぁ…」
頬を桜色に染める彼女に首を傾げる幽助。
そして…
「幽助、その女子は誰だ?」
いきなり上から降ってきた声に栄子は周りを見回す。
「屋根の瓦落とすんじゃないよ、お前達。」
はぁっとため息をつき幻海は後で色々弁償してもらうからね、と幽助に釘を刺す。
「うわ、はやく降りろおめぇら!今金なくなったら螢子に怒られる。」
「…甲斐性のない男だな。」
また別の声色。
屋根かららしい。
栄子は庭に出て屋根の上を見上げる。
するとそれを見計らってか飛び降りてくる金髪の男。
(結構高いんですけど…)
軽々と地面に着地する男に驚き、同時に足は大丈夫なのだろうかと心配してしまう…。
「おぉ、麗しい女性。はじめまして、僕は鈴木と申します。すうちゃんとでも呼んでください。」
ぎゅっと両手を握り金髪の男鈴木は栄子を見て頬を赤らめる。
「は…はぁ。」
「おめぇ、女になると本当にみさかいねぇのな。」
頭の後ろに腕を組み呆れたように言う幽助。
「ばっ…馬鹿。なんてことを。こほん…お気になさらずに、ぱっぱらぱーの独り言など耳を貸しませぬよう。これからはなにかあればこの私に…」
「そいつは蔵馬の大事な幼なじみだぜ?」
「!!…な、なんと。それは……」
おそろしい…。
青ざめていく鈴木がぽそりと呟き握られていた両手が開放される。
(蔵馬…。)
栄子は気付いていた、無意識に話す幽助や友人同士の中である幼なじみのあだ名。
自分のまえでは秀一と呼んでいる事も。
それに少し疎外感を感じる事もあったものの、一番側にいるのは自分だったためそこまで気にはならなかった。
でも、最近は彼に会えていないからかそれすらも気になってしまう。
「ふん、狐のお手つきか。」
そして、もうひとつの声と風が栄子の前に降りる。
白と青の着物に身を包んだ少し青がかった髪の少年。どこか品のある雰囲気と整った顔立ちに育ちの良さを感じる。
「…狐って、それも秀ちゃん??」
狐には似ていないと思う。
かわいいかもしれないが、狐と秀一。
…ぱっとしない。
「あっ…と、死々若丸、鈴木…ちょっとおめぇら、こっち来い。」
少し青ざめた顔で、手招きをし二人を呼ぶ幽助。
(ししわかまるさんっていうんだ…獅子?そっちの方が動物っぽい…)
「…なんだ。休憩か?はやく続きをやるぞ。一週間後には迎えがくるんだ。」
死々若丸は早くしろとばかりに不機嫌そうだ。
「そうだぜ。しかしおまえといると便利だな。わざわざあっちから迎えに来てくれるなんて。」
「いいから、おめぇら。早く来い。あいつに殺されっぞ!!」
引きつる幽助の笑顔。
何を焦っているのか。
休憩をするならお茶でも入れてくるべきか。
「…休憩するなら、お茶入れてこようか?」
「おっおぉ!!そうだな、じゃぁ頼めるか?」
栄子の言葉になぜか大いにほっとした様子の幽助。
「なら、僕も一緒に…」
「お前はいくな。」
栄子に着いて行こうとした鈴木を幽助と死々若丸の重なった声が止める。
そして…そのまま片方が言葉を続けた。
「俺は休憩なんぞせんぞ。今からでも魔界に行きたいくらいだ。」
「……ぁ…」
瞬間呟く幽助の小さな声。
それを聞き逃す事はなく、しっかりと振り返った栄子の姿。
それにがっくりと肩を落とす。
「魔界??もしかして皆妖怪さん?」
きょとんとした表情で聞く栄子。
「……い、いや…」
これは…
先の言葉が見つからず頭を押さえる幽助。
思わず死々若丸を睨むものの、それは無視される。
「…なにをいってるんだ、この女。」
死々若丸は怪訝そうに眉を顰めた。