第13.5話(妖狐編Ⅱ)
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栄子から少し目を離した瞬間だった。
変な胸騒ぎがした直後、聞こえた栄子の悲鳴にも似た声。
駆けつけたそこにいたのは一人の僧侶らしき男と側で倒れている少女。
蔵馬にも手をかざすものの、所詮人間。
人間ごときが、ふざけた真似を。
狐は一気に頭に血が登り、それは魔界の植物の餌になった。
ぐったりとする栄子に駆け寄ると、呼吸をしている事に安心する。
しかし目は虚ろで真っ青な顔色。
胸元から薬草を取り口の中で細かくかみちぎる、そして水を含むと栄子の口にそれを流しこんだ。
無意識に吐き出しそうなそれを、狐は許さないとばかりに舌で押し込む。
ビクッと反応する栄子の体。
拒絶反応を起こしているのだろうが、このままでは死を待つのみだ。
深く口付け薬を飲むように導く。
死なせはしない。
この世は弱肉強食、弱いものは強いものに支配される世界。
しかし、この存在は否。
なんとか薬草が栄子の喉を通ったのか、彼女は無意識に安堵の表情を浮かべた。
ほっと一息付き、狐は栄子の前髪を掻き上げる。
「おまえには参る…」
汗ばむ蔵馬の額。
心臓がいくつあっても足りぬ。
ぽそりと呟くと狐は栄子の額に優しく口付けを落とした。
改めて知らされる彼女の命の儚さ。
妖怪との生命力の違い、生の短さ。
以前黒鵺に言われた言葉が蘇る。
『お前にとってあいつは一瞬の存在なんだ』
だから、わかるよな?
そう念を押された。
分かっている。
今が永遠でない事は。
初めと違うこの感情はすでに自分でも分からない位歪んでいるものだった。
大切に慈しみたい愛しさと叶い切らない憎しみを抱え、たまに崩壊しそうになる。
それが苦しくて堪らない。
手に入れれば、少しは楽になるのだろうか。
欲に身を任せれば、俺は解放されるだろうか。
どうすれば満足するのだろうか。
最近はそんなことばかり考える。