第13.5話(妖狐編Ⅱ)
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蔵馬は不機嫌だった。
さっきまでは何故か異様に機嫌が良かった様に思えた。
団子屋を出る時までは。
だから私は言ったの。
『秀忠のお墓参りをしたい』と。
その瞬間、背筋に寒気がしたのは、気のせいなんかじゃなかった…。
場所を知らされていない私だったから蔵馬になんとかお願いして、屋敷の人からお墓の場所を聞き出してくれた。
もちろん脅した為、その後は夢幻花での記憶の消去も忘れずにだけど…。
お墓に向かう途中、彼は一言も私に話かける事はなかった。
わかっていた。
彼が嫌がる事も、秀忠の事をよく思っていない事も。
だけど私にとってはこの世界で初めて自分を大切にしてくれた人。
私も愛した人だ。
懺悔をしたかった。
私は秀忠を裏切ってしまっているから。
彼のお墓は立派なものだった。
お線香を備えて、手を添える。
亡くなった者達が行くという霊界。
彼はそこから自分を見ているだろうか。
私のせいで亡くなってしまった秀忠…
彼は私を憎んでいるだろう。
彼に許してもらおうとなんて思わない。
許さなくていい…。
ちがう。
許してはいけない、
だって…
カタンッ
横に水おけが置かれる。
「蔵…馬…」
彼はゆっくりと腰を降ろすと両手を合わせた。
そう…
なぜなら…
彼を許してしまっている気がするから。
彼に惹かれている自分がいるから…
彼は今何を思うのか。
隣で手を合わせ目を瞑り、どんな気持ちで今ここにいるのだろうか。
きっと妖怪にはこんな式たり等ないと思う。
弱肉強食の世界に住む彼らだから。
「…人間とはこういう行事が好きだな。」
そう言いながら彼は立ち上がる。
「……。」
その動作を自然と目で追ってしまうと、自分を見下ろす彼の瞳とぶつかった。
「俺は後悔はしていない。」
知っている。
「気がすんだら呼べ。」
彼は悲しげに金色の瞳を閉じると、そのまま墓と自分を背に歩いていく。
私には彼の気持ちはわからない。
でも…
不思議だ。
秀忠…
私はあなたを殺した彼と自分から一緒にいます。
ごめんね。
「滅!!!」
声がしたのと同時に振り返る。
自分を包み込んだ、激痛を伴う熱い青い炎。
「あぁぁぁっ!」
熱い…蔵馬…
「やはり妖だったか!」
知らない男の声が近づく。
息ができなく喉が焼けるそれに私はすぐに意識を離した。