第13話 近くて遠い想い
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物心ついた頃から一緒にいた。
母親同士が友人であり、家も隣だった為毎日の様に遊んでいた様に思う。
実際遊んでいた、と思うのは私だけで、彼からしたら面倒を見ていたに近い感覚だったように思う。
いや、始めは嫌がられていた。
子供の頃から大人びていた彼は、大人の扱いが上手い上、表の顔と裏の顔をうまく使い分けていた。
私の面倒を頼まれると母親の前では快く受けるものの、いざ二人になるとおもちゃを渡され放置されていた記憶が残っている。
笑顔でも子供が見せるような無垢なものではなく、愛想笑いに近い。
彼はそんな子供だった。
対して私は子供だった事もあるが嫌がられている事にも気付かず、なぜか異様に懐いてしまっていた。
たまに散歩中ほっとかれる事も多々あった。
何が気にいらないのかうるさいからと大人のいない時にはクローゼットに閉じ込められる事もあった。
今思い出せば子供ながら黒い。
さすがに後半は凹んでいた記憶もある…。
だけど、いつからだろうか。
彼が優しくなったのは…
「だめだ…」
ベットの上で布団から顔を出し唸る栄子。
いくら布団に潜っても寝れない。
ここ数日はそんな日が続いていた。
あの日からだ…。
寝不足な上、起きてもすっきりとしない疲労。
このままじゃだめだ。
あの日、送ってくれた車の中ではお互い無言のままだった。
気まずい等という感情はなく、ただ放心していた様に思う。
なぜ泣いているのかと不思議に思うほど現実味のない感覚。
いかし、自分の部屋に入ると、徐々に冷静になっていく自分がいた。
一番に浮かぶのは彼の傷ついた顔。
裏切られたと感じた時に向けた視線の先に見た彼の表情が頭から離れない。
とても反省した。
冷静になれば分かる事。
彼の彼女へのあの態度と言葉は彼なりの優しさだ。
想いに答えられない彼女に対してわざと嫌われ役を買ったのだ。
幼い頃から見てきた幼なじみだ。
彼の性格は自分が良く知っている。
なぜあの時そう思えなかったのか…普段見ない彼を見て冷静になれなかったのだろう。
あんなにも優しい彼を信じてあげれなかった。
彼女にしてもそうだ。
勝手に彼の気持ちを推測して励まして結果傷つけてしまった。
自分の浅はかな行動と考えのなさに心底呆れる。
酷い事を言ってしまった。
だけど…
今思い出しても眩暈する。
あれは一体何だったのか。
怒ったのだとしても、こんな怒られ方は勘弁してほしい。
怖かった。
頭がおかしくなるかと思った。
死ぬかと思った、本当に。
熱くて、甘くて…
体の奥が熱くなった。
大事な幼なじみなのに…
まだなくならないあの時の感触。
すっきりしない。
心がもやもやしている。
あの日から、幼なじみから一切連絡もない。
やはり怒っているのだと…思う。
「…仲直り、しなくちゃ…」
このままなんてしんどくて耐えられない。
病気になってしまう。
栄子はそう呟くと、寝なければと無理矢理瞳を閉じた。