第13話 近くて遠い想い
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金色に輝く月が雲に覆われ自身の存在を隠そうとする中、かすかに漏れる月明かりが、魔界の丘の上に立つ彼を照らしていた。
草木もない静かな場所。
見通しが良く魔界の生暖かい風もこの場所は少し涼しい。
彼は今しがた自身のとった行動に忌々しそうに舌打ちをした。
たまたま気になり邪眼を開け見てしまった光景が脳裏に焼き付いて離れない。
見ていて気持ちの良いものではなかった為、すぐに見るのを止めたものの、先日の狐の行動といいすでに限界らしい。
本来の狐なら色恋など簡単だろうに。
枷を外した狐はどうなるのか。
やっかいな奴に惚れられる女だ。
生暖かい風が飛影の黒髪を揺らす。
濁った夜空に雷の亀裂が入る。
「珍しいな、考え事か?」
よく知る声。
一人になりたいからここに出向いたというのに、相変わらず空気の読めない奴だ。
そう思いながら後ろの木にもたれ腕を組み楽しそうに微笑む彼女を睨んだ。
「そう睨むなよ。いきなりいなくなるから探したんだぜ?」
こちらを見て面白そうに笑う。
「しかし、お前のそんな顔はなかなか見れないな。何か嫌な事でもあったのか??俺に当たられても困るがな。」
まるで心の内を読まれているのかと思うほど彼女の指摘は当たっていて、自覚させられるとさらに腹が立つ。
「…何か用か?躯。」
用がないならほっとけとばかりに躯に背を向け場所を変えようかと踵を返す飛影。
「はやるなよ。数ヶ月後のトーナメントだが、おまえの仲間たちも出るんだろう?雷禅の息子と狐に部屋を用意してやろうとおもってな。まぁ、無理にとは言わんが。」
足を止め振り返る。
「…貴様が遊びたいだけだろうが。」
舌打ち交じりにそういうと躯は嬉しそうに目を細めた。
「まぁ、最近暇しているからな、それもある。」
「幽助はバトルマニアだからいいかもしれんが、あの狐は最近はストレス発散位にしか戦っていないぞ。」
「ほう、ストレス発散…か、あの狐が。奴が追い込まれるなど、想像できないな。」
面白そうに孤を描くその口角。
こういう時のこいつはろくな事を考えない。
「…おまえ、いらん事はするなよ?」
「いらん事とはなんだ?おまえが狐の心配をするとは珍しいな…。」
さも面白そうに言うものだから、分かっていて言っているのだろうか。と眉を顰める。
どこまでこれが知っているのか。
たとえ知っていたところでどうこうできる話ではない。面白くもない話。
躯が興味を持つとは到底思えない。
(俺の杞憂に過ぎんな…。)
ふうっと息をつく飛影を横目で見ながら躯は目を細めた。