第12話 美しい薔薇には棘がある
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栄子は彼女を部屋に上げ、背中をさすって落ち着かす。
初対面の自分が何をしているのだろうと思うもの、泣いている女性をほおっておく等できない。
「ごめんなさい。泣いたりしちゃって。」
化粧も少し取れてしまい目を赤くした女性はまだすんすんと鼻を啜るものの大分落ち着いたようだ。
「いいえ。大丈夫…ですか?」
心配そうに眉を寄せる栄子を彼女はじっと見ると、少し微笑む。
「あなたが彼の言っていた幼なじみさんだったなんて。優しいのね、ありがとう。」
品のある優美な微笑み。
自分と同じ女性とは思えない美しさと女性らしさと気品。
栄子は、ほぅっと息を吐く。
「…いきなり来てごめんなさいね。驚いたでしょう?…彼が一人暮らししたって友達に聞いて、気づいたらここまできちゃって…。」
俯き申し訳なさそうに言う彼女。
「……彼女さん??」
今更だが。
「元…ね。」
くすりと微笑む。
元。
自分にも数ヶ月前に経験した辛い失恋。
だからこそ、彼女のあの時の表情をみてピンときたのだ。
彼女だと誤解し傷ついた表情。
「なんで…別れたんですか?」
あの幼なじみの事だ。
そう簡単に別れるとは思えない。
大事に大事にしてくれる。絶対。
それは幼い頃から知っている栄子だからこそ言い切れる事であった。
「私から言ったの…彼が私の事を好きじゃなかったから…」
「……へ??」
好きだから付き合うのでは??
栄子の脳裏に?マークが浮かぶ。
「彼、いつもどこかうわの空で。それが寂しくて…どれだけ好きだと言われても信じれなくてね。試したの…彼を、別れようって言って。……なら、彼はあっさりしたものだったわ。俺より君に似合う人が現れるよって。」
栄子の心がずしりと痛む。
思わず胸に手を当てる。
「しばらくそれで様子をみたの。でも…彼を知っている友人に話を聞いてもなんら前と変わりなく過ごしているって。あぁ、私の存在ってそんな物だったんだって…。悲しくなって。」
「それで…今日??」
しかし彼女は首をゆっくりと振る。
「恥ずかしい話だけど、恥を承知でもう一度やり直したいと彼に言ったの。」
瞳をあげ切なそうに微笑む。
「だけど…」
ぽろりとまた涙が落ちる。
栄子は自分のハンカチを渡し、じっと彼女の話を聞く。
いつも優しい彼。
許容範囲は広く多少の事なら笑って許してくれる。
心配性で暖かい彼。
それが栄子の知る大好きな幼なじみ。
なのに…
「君の事は好きになれないっていわれた。」
分かっている。
彼の気持ちを試した彼女も悪い。
でもそこまで追い詰めたのは彼だ。
それをあの人なら絶対分かっている。
「あの人は初めから私を好きじゃなかったのよ。今日も本当は来るつもりじゃなかったんだけど、気づいたら来てて…」
「今日!」
思わず彼女の手を取り、ぎゅっと握り締める栄子。
「彼夕方には戻るから、ちゃんと話し合ってください!!彼はちゃんとあなたの事好きだったははずだから!!誠実な彼だもの!!私が知ってる!!」
一瞬驚きあっけに取られる彼女だが、栄子が握る自分の手と真剣な顔を見て「もう、そのつもりよ」と、少し微笑み頷いた。