第12話 美しい薔薇には棘がある
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幼なじみの引越しの手伝いもそろそろ終盤に近づく頃、リフレッシュ休暇ももう終わりを迎えようとしていた。
その頃、栄子の携帯電話には、竜崎からのデートの誘いが多く入るものの先日の引越し祝いでの記憶のない失態を詫びているのか、なかなか出掛けようとはしなかった。
そんなに彼に気を使わなくてもいいのでは…とは思うものの、理由をいつまでたっても言わない事が気になり、もしかして自分は言えないような事を彼に、もしくは周りにしてしまったのかと罪の意識に苛まれていたのである。
もともとしばらくの外出をよく思っていない幼なじみだったため、少しもの謝罪とご機嫌取りでもあった。
よく鳴る携帯電話のメール音。
避けているわけではないのだが、最近は少しひどい。
アルバイトに関しては元々行ける日に行くという約束だったため、あちらもその事に関しては何も言わない。
ただ、誤解のないように丁寧に断っているものの、それでもデートの誘いが多いのだ。
やはり若いだけあってパワフルなのかもしれない。
栄子なりの解釈でそれを納得しようとするものの、何かしっくりこない。
考えても仕方ない。
自分のこういった感覚はあまりあてにならないため、気持ちを切り替えて再び整頓に取り掛かかろうと段ボールに手を入れた。
ふと手に触れた物を拾い見る。
そこには小学生の自分と幼なじみが並んで撮っている運動会の写真があった。
栄子は泥だらけの頬にへらへらとしまりのない顔を向けた体操着姿。
対して彼は同じ体操着でも姿勢良く、子供とは思えない優美に微笑むそれ。
子供のときから変わらないのだと、改めて感じさせられると共に自分はもう少し変わった方がいいのではないかと少し反省させられる。
写真があるという事は他にも思い出の品があるのではないかと再び段ボールを覗き込んだその時だった。
ピンポーン
インターホンが鳴る。
(…お客さんかな?…秀ちゃんにしては早いしね。)
彼はすでに仕事が始まっている。
強引に手伝わせろと言う栄子にしぶしぶ合鍵を渡した幼なじみ。
ほとんどの片付けは一日で片付いていたものの、彼女は何かしら日用品を持ってきたり買いに行ったりと普段お世話になっている分、今しかないといった感じで甲斐甲斐しく働いているのだ。
先ほどの段ボールもすでに秀一が片付けた後のものなのだが、もっと整理をしようと、わざわざ引っ張り出している。
彼にしたらいい迷惑かもしれない。
ここ数日はそのような感じで彼が仕事に行っている間、栄子が引越しの整理をするといった図が出来ていた。
「はぁいはぁい!!」
元気良くドアを開ける。
開けたのと同時に香るフローラルの香り。
そこには長い髪に肌の白い綺麗な女性が立っていた。
彼女は少し驚いた様子で綺麗な黒い瞳を揺らす。
(うわ…美人さんだ…)
栄子は思わず唾を飲み込む。
なにかショックを受けているのだろうか。
何も話さない女性。
彼女の黒い瞳が自分を見て不安に揺れている。
瞳に溜まっていく涙。
どこかで見たこの表情。
栄子は、ハッとし首を振る。
「あ…私、幼なじみです!!秀ちゃんの!!」
「え…」
「引越しの手伝いしにきているだけで、彼今仕事いってます!!」
今にも泣き出しそうだった彼女を止めれたと思った栄子だったが、それもつかの間、彼女は両手で口を押さえ栄子の前で泣き出す。
栄子は意味がわからないといった様子で彼女を見るものの、大体の検討はついていた。
彼女は彼に会いに来たのだ。