第10話 仲間
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幽助が戻ってきた所で待ちに待っていた新居祝いが始まった。
ぎゃあぎゃあ、がやがやと近所迷惑ではないかという位の盛り上がり様。
幽助、桑原、螢子、秀一、栄子、そして遅れてきた雪菜に、仕事帰りだというぼたん。
ぼたんに関しては栄子は少しも面識がなくどこの誰なのか、全く知らない。
だから栄子は彼女に興味があった。
「そういえば、ぼたんさんて何の仕事してるんですか?」
「ん~わたしゃ、案内人だよ?」
頬を赤く染めてよい感じに酔っていると思われるぼたんにお酒をつぐ栄子。
「案内人?なんのですか??」
「そりゃあんた、れいか―…」
瞬間背筋に凍るような悪寒が走る。
「栄子、ぼたんは事務員だよ?いつも上司にこき使われて色んな所を行ったり来たりしている雑務担当のOLさんなんだ。ね?」
にっこりと黒く微笑む秀一の笑顔に、あきらかに顔が引きつるぼたん。
ただ、こくこくと頷く。
(あっ…酒気が引いていってる。)
「雪菜さん!!桑原和真は…あ、あなたを、あっ、愛してます!」
ベランダから外に向かって叫ぶ桑原。
「まぁまぁ桑ちゃん、落ち着いてさ。」
隣で宥めるぼたん。
そして隣の部屋で早くも寝ている雪菜と螢子。
「また桑原君、酔ってますね…」
「あんにゃろう、本人前にして言えねぇのか。」
秀一と幽助はそんな彼の様子を見て呆れた様に話しながらお酒を飲む。
栄子はというと…
トプトプトプ―…
コップに焼酎を注いでいた。
「まだ飲むの?」
もうやめたら?と秀一は心配そうに栄子を見る。
彼女の頬はピンク色に染まり、目はトロンとしていて視点は定まっていない。
「だめ~、秀ちゃん一杯飲んでいいって言った…ひっく…もん!」
ぐいっと水割りを飲む。
そんな様子を見て、幽助はヒューと口笛を吹く。
秀一は、はぁっとため息。
「そういえば、蔵…あっ、もういいよな、蔵馬で。…おめぇ、前の彼女どうなったんだ?最近見ねえから。」
「あぁ、別れましたよ。」
栄子の口元をハンカチで拭きながら、しれっと答えた秀一に一瞬あっけにとられる幽助。
「…あっ、そうなの?結構美人だったのにもったいのぇな。(保護者だ…。)」
「そうでしたっけ…」
忘れてしまいました。とくすくす笑う。
「おまえ、真っ黒…だな。」
皆騙されている、と心の中で彼は呟く。
「おかげさまで。」
自分の隣でごくごくとお酒を煽る栄子の様子を見ながら言う。
「あ~あ…おめぇがあのままなら俺の相談聞いてもらいたかったんだがな。」
「…螢子ちゃんとの事ですか?」
さすがに勘の良い狐に幽助は頷く。
「幽助達は、両想いでしょう?ならあとは覚悟があるかないか…ですよ。」
「一緒に生きられない。」
「…そう、です。」
「…俺、結婚しようと思ってんだ。あいつと。」
意志の強い瞳。
もう既に彼の中で決定しているのだろう。
「ただ、それはあいつに負担になるかもしれねぇ。あいつは俺と生きたいと言ってくれたが、どうやったっていつか…。おめぇに相談したかったのは何か方法がねぇかって事なんだ。」
ないならそこは腹くくるしかねぇけどな、と幽助は少し切なげに笑う。
秀一は一瞬口を開きかけるものの、目を伏せゆっくりと首を振る。
「………すみません。」
「いやいいんだ。仕方ねぇよ。まぁこんな話もあれだ、ちょっくら煙草吸ってくるぜ―…」
と煙草をくわえ立ち上がろうとした彼だったが…
「仕方なくにゃい!!!」
バンッとすぐそばのテーブルを叩く栄子。
話を聞いていたのか、幽助の前に座り栄子はじっと彼を見上げた。
「一緒に生きていけりゅ方法は…ひっく…ありゅ!!」
「……えっ。」
「わたし…読んだ、もの。彼のそばで…。螢、子さえ、その勇気さえ、ひっく…あれば……」
秀一は目を見開く。
「栄子、何を…」
秀一が彼女の肩を掴み自分の方へ向かせる。
彼女の瞳からは大量の涙が流れていた。
幽助は、意味が分からないといった様子だったが、なんとなく居づらいので落ち着いたら呼んでくれ、と一言残してベランダへと向かった。
「栄子…、どうして泣いているの?」
「…わからない。なんで?」
自分の頬に流れる涙を指で掬う。
しかしそれは次から次へと流れる。
「お酒入ってるから興奮しちゃったのかな?」
秀一は苦笑しながらハンカチで頬の涙を拭う。
なぜ泣いているのか栄子自身分からない。
一瞬頭に浮かんだ懐かしい感覚はすでにない。
思わず言った彼とは…読んだ…とは何の事なのか。
すでにお酒の入った回らない頭でこれ以上考える事は彼女には不可能だった。
「……秀ちゃんは、ひっく…誰と一緒に生きたいの?」
「……。」
翡翠の瞳が切なげに揺れる。
「彼女と別れちゃったの?振られたの??」
そう心配そうに首を傾げる。
「…振られたんだ。」
「秀、ちゃ…振るなんて…もったい、にゃい…」
む~…と頬を膨らます栄子に嬉しくておもわず笑ってしまう秀一。
「なら、栄子が彼女になってくれる?」
くすくすと笑いながら翡翠の瞳を細め耳元で甘く囁く。
酔った栄子にこの会話。
自分も少なからず酔っているのだろう。
さすがに彼女が酔っているといえど、こういった冗談にはいつも反応してくれるのだ。
だが、今日はいつもより酔っているのか、普段飲まない焼酎を飲んでいるためか見当違いの言葉が返ってきた。
「…うん、なるぅ~。」
へらへらと笑う彼女。
酔っていると分かっている。
分かっているのに狐の心は熱くなる。
明日にならば覚えていないだろうに。
栄子の顔に影が落ちる。
それが息がかかる距離にきた時だった…
「…飛影?」
彼女の口から出た知らないはずの友人の名前。
潤んだ瞳が射す視線の先には、黒ずくめの妖怪が目を見開いて立っていた。
