第10話 仲間
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秀一の母親のカレーはとても美味しかった。
レストランで食べる位か、それ以上かもしれない。
店でも出せるのではないかと栄子は思う。
口にスプーンを運ぶ度においしいおいしいと連発する栄子は、次回カレーの作り方を教えてもらう事になった。
料理上手な彼の母親には日頃から何かしら料理を教えてもらっているものの、今回のカレーは栄子に感動を与えたようだ。
今日は日曜日だったため、彼の家族は皆家にいた。
食卓を囲い、違和感なく溶け込む栄子。
再婚後も初めて会った彼の弟、父親も、気さくな人ですぐに仲良くなれたものだった。
幼なじみは伊達じゃない。
しばらくは楽しく昼食を済ませるものの、今一番の話題により彼女のテンションは一気に落ちていった。
「そろそろ行くよ、幽助達にも悪いし。」
「ちゃんとお礼言うのよ?」
彼の母親は手土産が入った紙袋を彼に渡す。
「わかってるよ。さっ栄子、行こうか。」
車の助手席のドアを開ける彼。
「……。」
栄子は返事もせず重い足取りで、開けられた助手席に無言で座る。
窓から外を見ると彼の母親はにっこりと笑い手を振る。
少し寂しそうに。
「……なんで教えてくれなかったの?」
ぽそりと栄子は呟く。
「急だったからね。ちょうど良い物件で即入居OKだったから、すぐ決めたんだ。」
「…今まで一人暮らししたいなんて一言も言わなかったじゃない。」
秀一は今日から一人暮らしを始める。
あのトラックはそういうわけだったのだ。
新居の方には彼の友人達がいてくれているらしい。
「…皆知ってるのに、私だけ知らないなんて。」
思わずしゅんと俯く。
「いや、言ってないよ。それに、決めたのも2日前だったから一人で全部やろうと思ってたんだ。なら今日の朝電話があって、手伝うから夜は新居パーティするぞって幽助がね。…言ってないのにどこから情報漏れたんだろう…。」
おかしいなぁ、と頭を傾げる秀一だったが、やっぱり彼かな…と言葉を漏らし少し笑う。
栄子はショックだった。
何も相談されないま、自分が今日仕事だったら、家にずっと居ていたら、知らないままだったのかもしれない。
怒りよりも悲しくなってくる。
彼にとって自分はそれ位の存在なのかと。
そんな彼女の様子を見て秀一は苦笑する。
「ごめんね、言うの遅くなって。栄子にはちゃんと言うつもりだったよ。急だったからバタバタしてて言う時がなかったんだ。」
本当にごめん、と申し訳なさそうに自分の頭を優しく撫でる彼。
「…秀ちゃんずるい。私ばっかりじゃん。…秀ちゃんにとって私って何?」
鼻がつんと痛くなる。
泣きそうになるのを抑えながら隣で運転している彼を見上げる。
「…大事な幼なじみだよ。だから、悲観的にさせてごめんね。」
甘く優しい言葉。
なぜか愛おしむような翡翠の瞳。
それに少し違和感を感じる栄子。
(…これは、何?)
「今日は一杯飲んでいいから。」
「!?…お酒あるの!?」
「幽助達だよ?あたりまえだろ?」
ぱぁっと表情が明るくなる栄子。
幽助とは何度か秀一の家で会った事があった。
もちろん螢子の彼氏だというので初対面の時から親しみやすかったのを覚えている。
(幽助君、そういえば酒豪だもんね。というか若い時からお酒を浴びる程飲んでたって螢子から聞いた気がする…)
先ほどの違和感などさっぱり忘れていく栄子。
「ちゃんと家に電話しとくんだよ?」
「はぁ~い!」
秀一はやれやれと息を吐いた。