第1話 幼なじみ
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玄関では夜遅くだというのに幼なじみの母は心良く迎えいれてくれた…。
顔面蒼白だったらしく、何かあったのかと心配させてしまったようだった。
『あの子ならまだ起きてると思うわ、書類がたくさんあるって言ってたし。あっそうだ、栄子ちゃん、ついでに夜食持っていってくれないかしら、もちろんあなたの分も用意するわよ!
今日はどうするの?久々に泊まってくれてもいいのよ?』
ニコニコと優しい笑顔で笑いかけてくれる幼なじみの母親。
以前、泊まっていたのはいつの話だろうか。
約十年以上前の事の様な気がする。
「よかったじゃないか、早くわかって。」
一段落ついた様で、やっとかまってくれる気になったのか、こちらを見て微笑む。
「秀ちゃん、超人ごと。」
鼻水をすすっていると、幼なじみはティッシュ箱を渡してくれた。
「まだ誠実な男だよ。ちゃんと別れ話をしてけじめをつけようとしたんだし。…まぁ後半、栄子をほって帰ったのはどうかと思うけど。」
女性顔負けの美貌で微笑む秀一。
そう、幼なじみは男の子である。
彼に会った途端、爆発した様に涙が洪水のごとく溢れ流れてしまった。
仕事が残っていた為少しの間放置はされたが…おいおいと泣くのを優しい言葉で慰めてくれた。
きっと今も仕事は残っていてまだ忙しいに違いない、だけど迷惑な顔一つせずに自分の相手をしてくれる。
彼の優しさにまた一つ涙がこぼれそうになる。
じっとそんな彼を見上げて思う。
(また綺麗になったなぁ…男なのに。)
少し癖のある長い赤い髪。
見るものを魅了する陶器の様なすべらかな肌と翡翠の瞳。
なぜ男に生まれたのかと不思議に思う栄子。
失恋したばかりだというのにそんな事を考える。
そんなにたいした事ないのだろうか…
「第一、本当にショックならそんなに食欲ないでしょ。」
秀一は夜食のおにぎりの乗っていたと思われる米粒ひとつとさえついていない綺麗なお皿に目をやる。
そんなものなんだよ、とまた軽く笑う。
(そんなものなのかな…)
栄子はしばらく考える。
秀一はそうだよ、と栄子の頭に手を乗せて優しく微笑む。
「…そう、だね。」
見上げると綺麗な翡翠の瞳と目が合う。
優しい瞳。
でもどこか醒めてて…
それでいてもなぜかそらせない…。
誰かに似ている…。
優しく頭を撫でられる。
その行為と乗せられた手の感触が気持ち良くて、
栄子の意識はいつの間にかゆっくりと薄くなっていった。