第7話 忍び寄る影
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ストーカー:
興味、好意、恨み等を持つ相手に許可なくついて行く、不快な行動をする事。(栄子談)
街から外れた場所にあるこじんまりとした木造のカフェレストラン。
その為かあまり人に知られておらず、しかし食事はとても美味しく雰囲気も快適な為、軽く仲間内では穴場になっていた。
そんな店に彼女達はいた。
「絶対そうだよ!絶対そう!!それは絶対栄子に気があるんだわ!」
彼女は形の良い口にパスタを頬張りながら熱く語る。
栄子より一歳年上の友人の螢子。
彼女は高校時代のバイト仲間であり、幼なじみである秀一の友人の彼女でもある。
長い栗色の髪にくりくりの愛らしい瞳。
昔から周りに人気があり、男女問わず誰からも好かれていた。
「それは絶対ない!だったらあんな気分悪くならないよ!なんか、寒気とかするんだよ?あれは殺意を感じるよ!ラブ視線ならもっとこう…」
オムライスを掬ったスプーンを口の前で止め、ふるふると首を振る栄子にそれは思い込みだと言う螢子。
「だって声も聞こえたんでしょ?嫁になるとかなんとか…まぁ、ストーカーだから愛情の形は歪んでると思うけどさ。」
「ゆっ歪み過ぎだよっ!」
「確かに…かなり心配だね。幽助にも言ってみようか?ていうか、くら…秀一さんには話したの?」
「…それは…」
幼なじみに夜のバイトを許してもらう条件?として出されたのはバイト後彼が栄子を迎えにいくというもの。
心配症だ、本当に身内なみだ。
兄がいたらこんな感じなのだろうかと栄子は思った。
来てくれた彼をバイト初日から思いっきり待たせてしまった挙げ句、理由を話してしまえば確実にアルバイトは止められる。
確実だ。
栄子は長引いたと適当に理由をつけその場を誤魔化した。
「それは…あんた、言っといた方がいいんじゃない??」
螢子は呆れた様にため息をつく。
「だって…10日間も家に籠もりっきりとか考えられないもん。」
やだやだっと再び首を振る。
「……秀一さんはあんたに甘いのか厳しいのか、わからないね。」
「うん、まぁ…甘さ八割なんだけど、あとの二割が濃いんだよ。なんといっても。」
「ふぅん…」
(過保護なんだわ…)
螢子は秀一の正体を知っている。
だが、幽助から色々と聞いてた過去の彼からは想像がつかない。
人間の秀一は誰にでも優しい。
人間として育つ内に母親から返す事の出来ない程の愛情を貰い変わった部分もあるのだろう。
しかし一度敵に回せば冷酷な狐と化す。
残酷非道な妖怪に。
そんな彼が母親以外に執着するものがあったのだ。
螢子は心の中で付き合えばいいのに…と思う。
だがそれは簡単には言えない。
自分にも多大な覚悟がいたから。
一緒には生き続けられない覚悟。
「…とりあえず食べちゃぉっか!」
螢子は止めていたフォークを動かす。
栄子も冷めちゃうしねー、と大きな口をあけむしゃむしゃと食べる。
緊張感のない二人。
いや、一人は食べながらも心配そうに相手を見る。
(やぱ、言っておこう。幽助に。)
おいしそうに頬を緩ませている彼女を見て螢子は思わず笑みがこぼれる。
(蔵馬さんも大変だわ。)