第71話 最終章
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「なぁ、蛍子。誓いのキスっていつから協会の屋根でするようになったんだ?てかあいつらキス何回すんだ、一体。」
「あの子だけが気付いてないならまだしも、蔵馬さんまで。」
公共の面前で。
堂々と熱々のキスを披露する二人で。
友人である幽助、蛍子。そして、数名はまだ飛竜に乗らず外にいた。
「蔵馬が気付いてないわけないだろう?」
怪訝そうに赤い瞳を細め幽助の隣で呟く飛影。
「うぉ!飛影いつの間に!!」
「さっきだ。」
「あぁ、躯と来たんか。」
驚かすなよ、胸元を抑える幽助。
「栄子は誓いの口付けのつもりらしいが、…見てみろ。」
「あ、蔵馬の奴こっち見て笑いやがった!」
「…もう手など出さんのにしつこい奴だ。」
「…おめぇにはそう見えんのか?」
「そうしか見えん。」
「まぁ、前科があるもんな。おめぇー…って、嘘嘘!!マジにとんなって!!」
殺気の篭る赤い瞳に睨まれ、青くなりブルブルとに首を振る幽助だった。
隣では呆れ顔の蛍子。
「まぁ、前途多難だけど…」
桜がハラハラと舞う
「おめでとう!!!蔵馬さんに栄子!!!」
「そうだそうだ!幸せになれよ、おめぇら!」
「…よかったな。」
見せ物だった事に驚き真っ赤になる栄子とやはり確信犯なのか、はははっと笑う秀一。
ハラハラ
ハラハラと
桜は舞い散る
それは二人が初めて出会ったあの時と同じ。
傷だらけの狐
幼い少女
冷酷な妖狐の心を溶かした無垢な少女
当たり前で
でも必然で
混ざり合わない彼らはだからこそ混ざり合いたいと願う
繋ぐ未来に笑顔を運びたいと願う
季節は巡る
ーーー
ーーーー
「一件落着だな、とりあえずわ。はぁ、肩凝った、ぼたん揉んでくれ。」
霊界のとある一室では水晶を眺めていたコエンマが息をつきながら背もたれに凭れる。
「はいはい。お疲れ様でしたコエンマ様。よく頑張りましたね!」
「全くだー…あいつらはいつもわしに無理難題を押し付けよる!あ、もうちょっと左…そぅ、そこだ。」
「(赤ん坊も肩凝るんだわさ。)…ねぇ、コエンマ様。結局、契約書通りに事は進んだんですか?」
蔵馬が持ってきた古い和紙。
どこから見つけて来たのか。
陰陽師の家系伝わる反魂の術の契約書。
契約書といえど本人か署名するような物ではない、呪いの書だ。
禁術にて生を受けた物の名が見た事もない文字で刻まれる。
連なる不明な署名達。
一見ただの契約書に見えるその和紙は破る事も燃やす事も不可能な書である。
そして、蔵馬は時間を掛けそれを翻訳したのだ。
必要だったのは署名ではなくその後に続く長い文字。
それはー…
「未だ禁術でとはいえ生きている者の魂のみを霊界に繋ぐなど、初めてじゃから苦労したわい。」
そうなのだ。
強靭な肉体と力を持っていようと、魂はひどく脆い物。
もちろん本人の同意がなければ生きている者の魂を繋ぐ事など不可能。だが、彼女は是非と魂を渡す事を許可した。
繋ぐとは言い方を変えれば魂を拘束するということ。
魂を繋げば、力は発揮できない。
そして日に日に弱って行くことも絶対。
それでも自我をなくし周りを破壊へと導くよりはましだと彼女は言った。
自我がなくなった時、繋がれた魂をどうするかはこちら次第。
痛みを与え弱らせるのも、力でねじ伏せることもできる。
そして殺すことも。
「あやつの魂はこれまでに見たことない程、澄んでて力強かった。…破壊神とならんでくれるのは助かるが…、いつかわしが決断を下さなければならんと思うと気が重くてな。」
ーーー…
『言霊でも言いましたが、元は霊界の責任。』
ー…対象者の最終操作手段を霊界にするあたり内部を熟知していなければできないことです。
狐はそう言った。
『貴方の先代かまたその前かは知りませんが、貴方が今の地位にいる事はその責任もついてくることは必須です。』
『わしを、脅迫するのか?蔵馬。』
『脅迫??人聞きの悪い。』
『ならー…』
にこりと笑う狐に背筋が凍る。
『忠告ですよ、魔界は今尚も霊界に対して不信感を抱いている。ー…魔界の大統領に決まるはずだった魔女の突然の辞退。…なんででしょうね?原因は禁術の使用による自我破損の危険性。禁術の出処は人間界でも作成にあたりなんらかの形で霊界と密通していたことには違いない事実。見逃していた霊界ー…いくら過去の失態でも魔界にとっては関係ない。有能な人物を失った事には変わりない。』
『……。』
『まぁ、ただの先読みですけどね。足はいつかつきますよ?ー…それをー…』
俺達が足がつかないように協力してあげます、って言ってるんです。
細まる翡翠の奥に金が帯びる。
ゴクリとツバを飲み込むコエンマに秀一は再びにこりと笑みを浮かべた。
『まぁ、でもー…』
その後に続いたどこか困った様に言った狐の言葉が今でも気になるがー…
ーーー…
「……わしって、昔から尻拭いが多いと思わんか?ぼたん。」
霊界の黒い歴史はなかなか絶えない。
「あらあら、それはなんだかんだてコエンマ様の人柄がお優しいんですよ。」
「ぼたん…。」
思わず涙腺が緩む。
「まぁ、付け込まれもやすいんでしょうけどね。」
ケラケラ笑うぼたんに、一瞬で感動が消え去ったとはいうまでもない。
そしてー…
バンッと扉が乱暴に開かれる音に「コエンマさまぁ~!!大変です!」と言うジョルジュの焦った声に蔵馬の続きの言葉がコエンマの脳裏に蘇る。
「魂が!!魔女の魂が消えました!!!」
『魂を厳重に霊界の監視下に置いてもいなくなった時はー…もう何も心配は要らないでしょう。』
どこか切なげに笑った蔵馬。
大問題だ、それこそあり得ないのだがー…
『時の番人達は優しく残忍な生き物です。』
時の番人とは
妖精達の別名
無邪気な彼らは時として人を誘う
時の番人を従える存在もあると聞くもそれを見た者は一人もいない
『彼ら達の情けはー…』
『誰よりも慈悲深く残酷ですからねー…』
時の狭間は魔界も霊界も荒らすことのできない無法地帯
彼らがどこに魔女を連れて行くのかはー…
誰にも分からず
魔女にも分からない
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