第71話 最終章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「で、式のあとは魔界の三大美食ツアーにご招待だ!」
「三大美食!?」
えぇ!と頬に両手を当て目を輝かせる栄子。
「特別、新郎新婦には食べ放題を許す。」
「た、食べ放題!??き、聞いた!?秀ちゃん!!食べ放題だよ!三大美食が!!あの、三大美食が!!!」
「……栄子。」
彼女の胃袋を掴み、金に物を言わせる躯の言動。
呆れながら深く息をつき額に手を当てる秀一の腕を掴みながら、彼女はこれでもかと興奮している。
「さぁ、蔵馬。愛しい花嫁は魔界の食事をご所望だ。」
はんっと勝ち誇った様に笑う躯。
それに狐の眉がぴくりと動く。
隣では未だ興奮し飛び跳ね「三大美食、三大美食!!」と鼻息を荒くしている栄子。
彼女の希望は叶えたい
だがー…
「三大美食と俺とどっちがいい?」
甘く低い声が落ち、それと同時に柔らかな薔薇の香りが彼女の鼻腔を掠める。
「…え?」
顔を上げた彼女の肩を抱き寄せる狐。
彼女の唇に落ちる秀一の柔らかな唇。
さっきとは一変
瞳が据わる躯に
満面の笑みを彼女に向ける秀一
「俺だよね、栄子。」
一瞬惚ける彼女だったが、次第に目を見開き顔も赤くなる。
そんな彼女の顔を覗き込む秀一。
「だめ?」
甘い狐の声にぷるぷると首を振る栄子。
「でも、式はー…って、きゃぁ!!」
「問題ないよ、ですよね?躯。」
彼女を抱き上げ、ゆっくりと振り返る。
風を受ける
靡く赤い髪
瓦礫を駆け上がるその姿に躯の瞳が鋭く細くなる。
「きさま…」
「ありがとうございます、躯。両親や親戚に楽しい旅をプレゼントしてくださって。改めてお披露目は皆が帰ってからさせてもらいます。あぁ、あと協会の修理費はもちろん貴方持ちですよ。躯。」
「しゅ、秀ちゃん!?」
「大丈夫。皆には俺からちゃんと言っておく。」
「え、えぇ~!!」
なんて勝手な。
躯も躯だが、珍しく自己中心な秀一の様子に栄子が驚く。
「だけど皆がー…っ!!」
抗議しようと見上げれば再び落ちる唇。
そしてすぐに離れるも熱の篭る翡翠が見下ろす
思わず栄子、ごくり。
それににこりと笑う秀一。
「わからない、かなぁ。今の俺の気持ち。ただでさえ君の姿にクラクラしてるのに、躯に抱きつくその無神経さと気楽な思考に、俺がどれだけイラついてるか。」
そんな二人に、はぁと呆れた様に息を付く躯だったがー…
「おい、蔵馬!餞別だ。」
躯が投げた物を狐は片手で取る。
手のひらを開ければ小さな包。
そして包から微かに香る臭いに、目を見開く狐。
「祝いの品だ。多言はするな。……使うも使わんもお前ら次第だ。」
フッと鼻で笑う躯。
そんな躯を信じられないと言ったように見る秀一。
彼の隣では何貰ったの?と首を傾げる栄子。
どこか困った様に笑う秀一に、ニヒルに笑みを深める躯。
「伝説の盗賊でも手に入れられなかった代物だ。せいぜい悩め。」
「…相変わらず質が悪い。でも、ありがとうございます。」
そして、立ち止まった足を動かし瓦礫の上を駆け上がれば、協会の屋根に出た二人。
晴れた日差しが二人にかかる。
「…秀ちゃん、ごめんね。」
「まぁ、慣れたけどね。」
クスクス笑う秀一に眉を下げる栄子。
「いざとなったら皆の記憶をリセットしてもう一度式をしようか?それか、どこかで二人で挙げる?」
ふわりと笑う彼に彼女の胸が温かくなる。
「……秀ちゃん。」
ちゅっと秀一の唇にキスをする栄子。
それに不意打ちだったのか、一瞬固まる秀一。
「式は十分だよ。お披露目だけまたちゃんとしよう。」
にこりと照れた様に笑みを浮かべる彼女。
それに手を口元にやり頬を微かに染める秀一。
「で、躯さんには、何貰ったの?」
今だ秀一の手にある包みに視線が向けられる栄子。
「……。今の君が気にすることじゃないよ。……ねぇ、栄子。それよりー…」
ー…お仕置きがいるな。
どこか遠い目をした後、ぽそりと呟きながら熱の篭る翡翠が彼女を見下ろす。
「へ?な、なにが?」
「さっきの事。」
「え?な、慣れたってゆわなかったっけ?」
どこでなんのスイッチが入ったのか。
目の前の狐はいつの間にか夜の帝王化している様な気がするのは気のせいだろうか。
「君の晴れ姿だからもう少し見ていたかったんだけど…そうもいってられないかも。」
「……。」
「いや?」
「いや…じゃ、ない。」
真っ赤になり俯く彼女の顔が恥ずかしそうに上がる。
嬉しそうに笑う秀一。
「愛してるよ、栄子。」
「私も…あ、愛してるよ、しゅ、秀一…ゆ、ゆっちゃった!!」
笑う狐と栄子。
互いに見つめ合えばどちらかともなく合わさる唇。
真っ白のベールとドレスが優しい風に揺れる。
.