第6話 廻り出す歯車
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「必要なのは女だけだ、いくぞ。」
車の窓から顔を出した男は栄子の腕を掴んでいる男に囁く。
(…どういう意味?)
かすかだが聞き取れた言葉に栄子は眉を潜める。
「優男は家で大人しくしときなっ」
腕を掴んでいる男は、空いている方の手でしっしっと秀一を払う仕草をし、栄子を車の後部座席に押し入れた。
「いっ…ちょ、いいかげんに-…」
放り投げられ、座席のシートの上でひっくり返った栄子は流石に扱いがひどいのではないかと、投げた男に一言言ってやろうと顔を上げ言葉を発するが…
青ざめた男の横顔に言葉が止まる。
「ひっ…」
男は腰が抜けたのか、尻餅を付きながら後ずさる。
何が起こったのか。
車に乗っていた他の二人も外に出るが、同じ様に顔が青ざめ、一人は逃げ出し、もう一人は後ずさり車に背が当たるとその場で座り込む。
栄子はチャンスだと、一気にドアから出ると後方に居た翡翠の瞳と目があった。
翡翠の瞳は栄子を捕らえると優しく微笑むので、思わず栄子も笑顔になり、男達の横を走り抜け彼の側まで行く。
よしよしと頭を撫でる彼。
もうお約束だ…。
泣きそうな気持ちをぐっと押し殺す。
しかし一体何があったのだろうか…。
男達の顔を見ると、何かに脅えている表情…
そしてその先には…
(秀ちゃん?…まさか、ね。)
栄子は首を傾げる。
「さて…」
彼は瞳を他へ移すと座り込んで震える男の前まで歩く。
「くる…な…」
秀一が寄ると男はさらにガタガタと震え出す。
「誰の命令?」
栄子から彼の表情は見えないが、凍るような冷たい声。
男は震える唇を開いた…
鼻を掠める火薬のにおいと、微かだが空気が揺れる。
「栄子!」
秀一の声と体を包まれたのはほぼ同時だった。
すぐに鼓膜が破れるくらいの大きな爆発音が二回響く。
それはすぐ側…。
生ぬるい火薬の匂いが混ざった血の雨。
霧の様に肌にまとわりつき鼻の奥をつんとさせる。
「秀ちゃん…これって」
彼の肩に隠れて外界が見えない。
だけどわかる…
さっきの人達が死んだのだと。
なぜ??
「…見るな、大丈夫だから。」
ぎゅっと抱きしめる力は強くそして暖かい。
微かに鼻を掠める花の匂いがした…薔薇ではない、でも安心する香りだ
栄子は秀一の腕の中で意識を手放した。
「…なんであいつが…」
栄子を抱きしめる腕に力を込める。