第70.5話 はらりはらり
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ある魔界の森深くー…
「さぁ、お別れよ。可愛い子達よ。」
決して派手ではない、しかし地味ではない品ある黒のドレスを着た女は自分の周りを囲う様にくるくる飛び回る妖精に囁く。
両の手の平を向ければそこに集まる光達。
『また会える?』
『会えるよ』
『会える、会えるよ』
キラキラくるくる回る妖精達に瞳を悲しげに細める女。
「……。…生憎、私は分からないの。」
『どうして?』
『どうして分からないの?』
「…生きて死んでまた産まれるのがこの世の理。その理に私は外れているのよ?」
『永遠に友達、僕たちの契約者』
『契約者、友達。』
「いいえ、友達は契約じゃないわ。自然になったものでしょう?」
『友達、友達、契約者?』
『契約者違う、友達?』
『違う契約者。違う友達。』
妖精達の声が飛び交う。
契約者だろうが友達だろうが、魔女からしたらだからと言って何も変わらない。
生き続ける事は破壊を呼ぶという事。
だから、狐達と霊界の主の提案に乗った。
だけどー…
『迷うな、迷え。』
『迷ってみたらいいよ』
『迷ってみる?』
何を彼らは言うのだろう。
自分にこんな事を言うのは初めてだ。
「…私は魔女よ?」
妖精達が自分をどうしようと言うのか…
「人間じゃないわ。」
迷う人間を妖精達は酷く好む。
迷った人間がどうなるかはそれぞれだ。
永遠に闇を彷徨う者
自ら死を望む者
望んでもいないパラレルワールドで生き続ける事になる者
『迷え、迷え。』
『迷えばいい。』
ー…生きる事は迷うこと
ー…迷い生きる事は普通のこと
妖精達はそう続ける
己に迷えと言っているようだ
と魔女は苦笑する
「私はー…」
『迷うことは弱さじゃない』
『迷わないことが強さではない』
ー…覚悟があるか、ないか、それだけだー…
低い男の声が響く
それは憎く懐かしくとも酷く愛しかった声
魔女の瞳が微かに揺らいだー…
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