第70.5話 はらりはらり
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人間界に戻ってから半年ー…
ー 秀一&栄子 ー
雀の鳴き声と
柔らかな寝息が耳にはいる
覚醒して行く意識
胸におさまる暖かな体温
微かに身動ぎするそれは
「…ん、おは、よぅ…秀ちゃん。」
見つめる先にゆるりと開いた虚ろな瞳が自分を見る。
「おはよう。もう、頭痛くない?」
彼女の顔に額に掛かる髪を指で戻す。
「…うん、たぶ…っっ、ぃた、だめだ、まだ痛い。」
起き上がろうとするも頭を抑え再びベットに倒れ込む。
離れていきそうな温もりが戻ってきた事で内心嬉しい狐はくすりと笑いさらにギュッと抱きしめる。
「飲み過ぎだよ。バカだね。」
言葉とは裏腹な態度と表情。
彼女は「だって会社から近いと安心するんだもの。」と狐の胸の中でボヤく。
彼女の両親に結婚前提で付き合いを認めてもらって半年。
両手を挙げて喜ぶ彼女の両親に驚きつつも酷く嬉しかった。自分の母親は俺の気持ちを元よりわかっていたのか「片思いじゃなくなってよかったわね。」と笑顔で喜んでくれた。
「今日はどうする?このまま寝とく?」
指を彼女の柔らかな髪に絡めながら耳元で囁く。
「うん、寝たい。それに秀ちゃんあったかいし……」
ぎゅっと顔を胸元に寄せる彼女に熱が内に籠る。
「秀ちゃん…」
「…ん?」
「好き、大好き。」
グリグリと頭を擦り付ける彼女。
「……。」
以前より甘えてくる様になった彼女。
幼なじみの時とはまた違う。
安心だけではない。
否、彼女にとって安心が大半ではあるだろうが…
「秀ちゃんの臭いも、好き…」
掠れる彼女の声に翡翠の瞳が細くなる。
高鳴る胸は未だおさまる事を知らない。
何度この腕に抱いても慣れる事はない。
「…栄子…」
呼べば微かに顔を上げる彼女の額に唇を落とし、そのままたどる様に頬にキスをする。
「朝だけど、いい?」
そしてそのまま彼女の顔を覗き込みニコリと笑う。
「……え?」
絡む手に近づく翡翠。
「今日は家でゆっくりしよう。二人で。」
ちゅっと首筋に落ちる口付け。
「っ…う、うん?え??…な、なに?私、まだ頭が痛いなぁって、感じなんだけど…」
なんとなく雰囲気に気付いた彼女はどことなく口元が引きつる。
「うん、無茶はさせないから。」
欲を孕んだ熱の籠る眼差しが彼女を見下ろす。
ごくりと唾を飲み込む彼女。
人間界に帰ってから彼を受け入れた栄子。
初めこそ羞恥と恐怖があったものの、優しさと愛情の詰まった痛みと快感は一気に彼女の体と心までも解した。
彼に求められて嬉しくない訳はない。
だけど…
何度も酔わされ、意識が無くなりそうな程翻弄されるそれは、その後、彼女自身が何も出来なくなる事を表していた。
そして、何もできなくなった彼女を狐はしめしめと思い、飽きる事なく再び貪るから厄介だった。
労わるフリをしながらも所詮フリ。
それこそとめど無く何度も貫かれ与えられる快感に最後は時間さえもわからなくなる、時には意識さえ手放す。
何度も囁かれる愛の言葉に己の名前。
どれだけ愛されているか
求めてくれているのか
艶やかな熱の籠る彼の瞳に
決して逃がさないと繋ぎとめる腕に
優しくも激しいそれに
溶けて死んでしまうかと何度も錯覚した
だからー…
「今日は体調が…」
本調子じゃなければ私は死んでしまうだろう。
「大丈夫、加減する。」
ちゅっと鎖骨に落ちる唇。
聞いちゃいねぇと内心突っ込む彼女だったが…
囁かれた言葉に
求める眼差しに
彼女はただ覚悟するのだったー…
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