第70.5話 はらりはらり
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ー 躯 ー
躯が魔界の主となり半年
もとより活気に溢れていた城下は更に賑わい土地も拡大し
魔界の首都となったそこは更なる発展を遂げていた
同様に期限付きとはいえ(ひとまず三年だが)躯の忙しさは以前より半端ない
はずなのだがー…
バタバタと忙しそうに走り回る使用人達
そんな中に同じ様に城内の廊下を必死の形相で走る男がいた
使用人、メイドの挨拶なんど完璧無視。下手をすれば廊下を歩く客人の姿さえ目に入っていないその男は大きな大理石の扉の前に来ればノックも忘れ両手で激しく開ける。
「躯さまぁ~!!!」
そんな己の主の名を叫びながら。
だが、そんな男の姿に気づいているのか気づいていないのかー…
「ほら、お前の負けだ。一枚脱げ。」
「えぇ~これ脱いだら下着になっちゃいますよ、躯様のエッチ。」
「だから脱げといっているんだ?なんだ?俺に脱がしてほしいのか?可愛い奴だな、おまえは。」
イチャイチャ
キャッキャッ
とメイド二、三人と戯れる
その男の主、躯。
男の目が一瞬据わり、フッと息を付く
そして次の瞬間
「むくろさまぁ!!!!!」
男の激怒の叫びが室内に響き渡るのだった。
ーー
ーーー…
ーーーー……
ムスッとソファで頬杖を付く躯。
「聞いておられますか!?躯さま!!貴方は一体どんな神経をしてるんですか!??新人メイドが思ったより可愛かった!?馬鹿ですか、あんたは!!」
メイド達を強引に返し、今に至る。さっきまで本気で楽しそうにしていた躯は今では不貞腐れた子供の様だ。
「おまえなど脱がしても俺は楽しくないんだ、奇琳よ。」
「誰が脱ぎますかぁ!!!」
主の戯れはたまに冗談を越す。
「躯さま、貴方は今この魔界を統べる方です!書類もわんさか溜まっています!!しかも今日は魔界会議も控えてるっていうのに、またこの前の様に煙鬼に絞られますよ!?」
「…仕方ないだろう。やる気が出ないんだ。からかう玩具もないしな。」
「散々メイド達と遊んで何言ってるんですか。」
最近躯の戯れは酷いのだ。
人間の娘が帰ってから、だが。
「やる気でないぜ。」
つっぷす躯。
「……。」
「…人間界まで勢力伸ばそうかなぁ。」
ぐだぁと項垂れる彼女に奇琳は呆れた様に瞳を細める。
「霊界と戦争になりますよ?」
ー…狐にかなり釘は打たれている。
あの娘を呼び戻すな、と。
「戦争?願ったりだぜ、この退屈を払拭してくれるなら。」
「馬鹿な事を…。その前に黄泉や煙鬼に殺されますよ?」
「良い暇つぶしだぜ。やるか?」
「やりません。また繰り返してどうするんです。それに独裁主義ではないんですよ?」
困った主だ。
冗談だと分かりつつも好戦的な瞳は少なからず本気に見えて恐ろしい。
「…躯様。働きましょう。」
「……。」
『…だめですからね、絶対。』
ー…躯が言い出すのを見越しきつく言ってきた狐の言葉が奇琳の脳裏に過る。
たがー…
このままでは魔界がー…
頭を抱える奇琳。
「…躯様、ご褒美付きならば頑張れますか?」
すまん、蔵馬。
魔界の為だ。我慢してくれ。
心の中で深く謝罪をし、興味あり気に顔を上げた躯に奇琳は次の言葉を続けるのだった。
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