第70.5話 はらりはらり
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ー 鴉 ー
夜風が吹けば、微かな虫の声と草木の擦れ合う音が優しく耳に入る
男が見下ろした先
己の膝の上で仰向けに眠る女の頬に雫が落ちた
さわさわと辺りの草木が微かに揺れその風が己の頬を優しく撫でれば微かに感じる違和感
また、ポタポタと女の頬に落ちる雫
それを男は自らの手で優しく拭う。
ただでさえ白い肌は青い月明かりのせいでか更に白く浮きだつ。
女が瞳を伏せてからすでに三日。
微かに息はしているもののすでに意識はない。
そして生きている証さえ今は微々たるもの。
いつ命が事きれてもおかしくない。
わかっていたのだ。
それでも男は魔女に願った。
それほどまで会いたくて
もう一度女の生きてる姿を見たかったのだ
すべて己のわがまま
女の事を思うならばあのままそっと死なせてやればよかったのだろう。
どこまでも自己中心的なのだと男は心の中で笑う
だが、表立つ表情は真逆。
自身の頬に触れれば濡れる指先にこれが悲しみなのだと知るのだ
鴉として初めての涙
女の死を受け入れようとするも、気持ちは素直ではないのだ。
微かな虫の声
心地よい風
再び一筋の涙が頬を伝った
女の命の音が小さくなっていく
「俺は…忘れない。」
歪む男の顔
溢れて流れてくる涙
男は痛む胸に女をただ強く抱きしめた。
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