第70話 繋がる未来へ
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ワインがグラスの中で波を立て、月明かりでキラキラと反射する。
それを飲むことをせずテラスのテーブルに頬杖を付きながら見つめる躯。
そして側の柵には凭れた飛影の姿。
第三の目である邪眼がゆっくりと閉じれば、飛影は赤い瞳を開け、躯に視線を移す。
「おまえの言った通りだ。女はもう長くは無いだろう。」
「そうか…。所詮、鴉の持つ対価など今世から外れた者。命を対価にしても知れている、か。」
まぁそれでも良いと言ったのだろうがな。と、ゆらゆらとグラスのワインを揺らしそれを見つめながら瞳を細める躯。
「…命を対価に出来るのか?」
永遠の命に価値を見出せるのか。
飛影は怪訝そうに眉を寄せる。
それに躯の脳裏に先日の魔女との会話が浮かぶ
『対価は彼の未来よ。永遠に続く彼の先の人生を大半もらうの。』
それは彼女からすれば少しでも自我を保てると思っての取引だったのか-…
それともただ鴉が自分と同じ様にいつか闇に飲まれることを危惧しての事だったのだろうか。
『対価はもらったけれどこれがお互いにどう作用するかは私にもわからないわ。』
永遠の命なんて…本当はなんの価値もないものだもの。と苦笑する。
対価とはそのものにとっての価値を意味する。
だから死を望む者の命に価値はなく対価にならない。
反対に絵描きならば腕が最大の価値。
スポーツ選手にとっても身体の一部が価値となる。
もちろんそんな彼らにとっては命も大きな価値には違いないが。
だからこそ鴉の永遠の生には価値が酷く薄く対価にも量が必要だったのだ。
桃華は生き返った。
それでも長く生きられないと分かりながらも。
「俺なら数日しか生きられんのなら、逆にそっとしといてほしいぜ。」
ふんっと鼻で笑い悪態をつく飛影。
「……それが生きている者の貪欲さと愚かさだ。自分勝手だと分かりながらも求めずにはいられない。」
「……。」
「それでもあの女は鴉を恨んでないぜ。晴れて両想いだ。」
すっとワインを口に運ぶ。
「……結果論だろ。」
「結果論だが?」
ほかに何があるのか?
と楽しそうに笑う躯に、飛影はやれやれと息をつく。
「で、…どうするんだ?重みのない対価だ。ユーリの状態もしれてるぜ?」
「……闇に飲まれる事は止められん。」
「……。」
「だが、飲まれるまでは自由にさせる。」
「霊界が聞くはずが無い。ただでさギリギリなんだろ。そんな危険人物-…」
「術を作った奴はだいだいの予測は立てるものだ。最悪の状態も視野に入れて考える。と狐が言っていた。」
「……?」
「まぁ、どこまで通用するかは分からんがな。そもそも霊界に保管されている禁術の反魂の術の出所は人間界。最初使用したのも魔界に来た人間の男…。おそらく秀忠の先祖に当たる。そしてユーリの夫だ。」
「!!」
「……陰陽師の家系である秀忠の元に元々受け継がれてきた術だとしたら、反魂の術の本書は秀忠の家系が持っている。」
「………。」
「おそらく対象者を救う手立てはないだろう。破滅へ向かう術に救いは無い…だが闇に狂う者を手なづける事位は必要だと思わんか?」
妖しく微笑む躯に、飛影は赤い瞳を一瞬見開くもののすぐに呆れた様に細め、やれやれと息を吐くのだった。
お前と蔵馬が組めば怖いもの知らずだな…と。
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