第69話 君を想ふ
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真っ黒なドレスを身に纏い会場を歩く
肩を出す体のラインがハッキリと分かるマーメイドのドレス。
ドレスの胸元と裾にはスパンコールがあしらわれ、首元ではダイヤのネックレスが煌びやかに光り揺れる。
決して派手とはいえなくてもそれでも妖艶さは拭えない。
黒と宝石が彼女の白い肌を尚艶やかに見せ、彼女の雰囲気や外見の美しさに拍車が掛かる。
それは、その場にいる者、性別問わず目を奪われるほどであった。
魔女は陰湿で陰険、そして地味と言われていたのはいつの時代までであったか…
人目につかない場所で暮らすのは魔女の習性上変えられないものの、時代が変わると共に容姿や好み、性格は酷く変わってきたのだ。
中には逆に習性など無視し、人に溶け込み生きる魔女もいるくらいだ。
生まれながらの魔女もいれば
別の生き物から魔女になる者もいる
そういった時代の流れ、遺伝子の組み替え、変化により魔女は酷く自由な生き物となった。
司会に促され
ライトがあたるステージに上がれば、彼女はマイクを取る
今の魔界では北の黒魔女とも呼ばれそれなりの地位も名誉も築いた女、名はユーリ。
「皆様、こんにちわ。そして…私の為にお忙しい中お集まり頂きありがとうございます。」
生き過ぎれば何もかもが色褪せる
それでも変化を拒まない魔界、自由な仲間達の生き方は彼女にとってはそうそう飽きるものではなかった
だが、それでもいつか取り残されるー…
何百年、何千年…
何度時代が変わったか
文明とて同じこと
赤子から老人になり死にゆく仲間を何度見て来たかー…
生き続けるとは酷く難しく
想いが強くなければ、いつか闇に飲まれるのだと聞かずともどこかでわかっていた
「私自身、ここに立って居る事に驚いております。そして-…」
あの頃から、緩やかに時代は変わった-…
魔界の海は
とてもとても広大で
広かったー…
でもそれ以上に世界は広いのだと知ったのはいつだったか-…
海以外の場所に
海以外の生き物に興味を持つなど考えもしなかった
『君だけを愛している。君と同じになりたいよ。ユーリ。』
あなたを愛していた
あなたは太陽の様に朗らかで暖かくて優しい人だった
海の中だけではきっと知り得なかった感情
あなたと出会い私は始めてうぶ声を上げた
愛している
今でもあなたを愛しているわ-…
だからこそ許せなかった…
大事な大事な…私の娘
自分の命と引き換えに亡くしたかけがえの無い子
転生するのを心待ちにし
生きる糧にし
どれだけ待ち望んだ事か…
そして会った
一目で彼女が-…
そう、あなたが-…
「私は…」
マイクを持ったままユーリの視線は緩やかにただ一人に向けられる-…
それに目があえばにこりと笑みを向けるのは、白いドレスに身を包む女性。
そう、一目見て分かったのだ。
せんぱ~い…と手を振る彼女に笑みを返すユーリ。
あなたが…
私の全ての目的だった-…
一目、成長したあなたに会いたかった…
決して見る事のできなかった
あなたの成長した姿を近くで見たかったの…
だけど、一目見れば次は声が聞きたくなった
笑顔も見て見たいと思った
あなたの側に居たいと思ってしまったのー……
だから
もう十分…
ユーリの口から発する次の言葉に周りはざわめく…
目を見開く栄子。
そして、緩やかな足取りで壇上から下りて行く彼女。
壇上の裾では腕を組み無言のまま俯く躯の姿。
その側にいる奇琳はぽかんと口を開けたまま去って行く彼女を見据える。
-…誠に勝手ながら、私情により魔界の指揮を放棄したく存じます。魔界の指揮は準優勝の躯様にお渡しします。
貴方をどれだけ探したか
やっと見つけた
私の可愛い子ー…
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