第68話 燻る片想い4
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八つ当たりだー…
あのクソ狐…
自室でソファにもたれながら真っ赤に晴れた頬を摩り息を付く修羅。
俺が何した…
『どうして止めなかったんですか?』
帰ってくるなり黒い笑みを浮かべた狐。
それに気配を消す指輪を彼女が所持している事すら知らなかった少年は必死に弁解する。
下手したら死んでいる。
確かにそれもそうだ。
とばっちりを食らう可能性は十分だ。
謝れば狐は冷めた瞳でやれやれと息を付く。
そして、俺も浅はかだった…と自分を責める様に瞳を伏せる狐だったが…
『これが最後になればいいね。』
伸ばされた手に悪寒が走る。
これは…
『黄泉は子供の躾に甘そうだから。』
至極満面の笑み(決して目は笑っていない)を向けられれば以前の悲惨な光景が脳裏をフラッシュバックした…
あいつ絶対闇討ちしてやる…。
いや、あれの前で彼女にこれでもかと甘えてやろうか…?
だめだ…後が恐ろしい。
以前より腫れ具合がましなのは狐の心情故だろう。
自分にも非があったからか…
それでも…
「こんな事なら首つっこまなきゃよかった。」
まじ八つ当たりだ。
**************
なくしたくない
無くしたくない
失くしたくない
「栄子…」
柔らかな声が意識をくすぐる。
浮上して行く-…
「…栄子-…、大丈夫か?」
薄っすらと瞳を開けた先に映る赤い髪に心配気にこちらを見下ろす翡翠の瞳。
その背後に移るのは真っ白な天井。そして首まで掛かる布団に気付けば自分は気を失い医務室に運ばれたのだと理解した。
「……。」
私は-…
あなたを責めてしまう
「栄子?どこか痛む?」
自分勝手に何度もあなたの前から姿を消した私だけど…
戦いで血を流すあなたを責めてしまう-…
死なないで
命を大事にして
心配させないで
私が言える立場でない事位わかっているのに-…
「…秀ちゃん-…」
「ん??」
「私は秀ちゃんのものだけど…秀ちゃんが先に死んだら、私は別の人の所へいくから…。」
どう言えば彼は戦わないだろうか。
「……。」
どうすれば彼に伝わるのだろうか…
自分勝手だとは思っている。
(…とっても意地悪だ、私。)
「大好き、だよ。秀ちゃん。」
伸ばす彼女の手が今にも泣きそうに顔を歪める秀一の頬に伸ばされる。
言葉だけでどこまで彼を繋げるのだろうか-…
- 秀一said -
栄子の様子が少しおかしい。
俺が飛影と戦ったから、だろうか。
以前にも飛影とは戦っている…
今回の飛影との戦いが死闘だとでも思ったのだろうか。
否、片腕を失くし致命傷を負っている時点で心配もするか…
それでも死ぬ気などさらさらないし、まず君を残して死ぬなどありえない…
確かに莫大な不安も抱えているが、やっと想いが通じて今までに感じたことのないほどの幸福感に満たされているのだ。
みすみす手放すはずがない…
君はもう少し俺を信用して欲しい-…
だけど、それは確かに俺のエゴであり彼女には分からない事だ…
「私は秀ちゃんのものだけど…秀ちゃんが先に死んだら、私は別の人の所へいくから…。」
酷いな…
確かに、俺が死んだら周りがほっとくわけもない。
…ありえそうだから、困る。
思わず無言になれば嫌な想像で顔が歪んだのが分かる。
伸ばされる彼女の手に顔を近づける。
「大好き、だよ。秀ちゃん。」
泣きそうな顔で俺に何かを懇願するような彼女の表情に眉が寄る。
彼女の縋る対象になればいいと昔から思っていた。
寄りかかり依存すればいいと。
それが叶っていると思ってもいいのだろうか-…
俺は君なしではきっと正常ではいられない
だから、君も俺と同じであってほしいのだと、何度望んだか。
だけど…
こんなにも辛そうでこんな切ない彼女の顔を見れば酷く胸の奥が痛んだ気もした。
望んだはずなのに、君の表情は俺の胸の内を困惑させる。
それでもどこかで嬉しいと感じて、もっと深みまで嵌って欲しいと思う俺は-…
末期だ-…
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