第67話 燻る片想い3
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そして-…
どさり-…
ベットの上に乱暴に降ろされる栄子。
痛くはないが、いささか対応が雑だ。
蔵馬でもこんな扱いは珍しい。
よほど機嫌が悪いと思われるも、今の栄子はご機嫌取りをしていられるほど冷静ではなかった。
「蔵馬!!酷い!!…私、飛影とちゃんと話つけるつもりだったんだよ??そ、そりゃ助けてくれたのはよかったけど、きっと飛影も本気で、あ、あんな事、する気なかったと思うの。」
「……。」
背を向けている蔵馬。
不機嫌なオーラは醸し出ているものの表情は分からない。
「だから、ちゃんと話させて、お願い。蔵馬があんな場面みたら誤解するのも分かるんだけど、でもね…」
「栄子…」
ふいに蔵馬がこちらを向けば、ベットに手を付き自分の顔を覗き込む。
凍るような冷たい金色の瞳。
それが細く鋭くなる。
「どこかに閉じ込めてやろうか??」
地の這うような低い声色。
「!!!??」
「おまえは俺のものだろう??」
近づく唇。
彼の吐息が自分の唇に掛かれば、ぶるりと身が震える。
しかし触れることは無い。
「俺を煽っておまえはどうなりたい。」
「あ、煽ってなんか…!!!」
「他の男を気に掛け、襲われかける。言うことも聞かない。どうすれば従順になるんだ??栄子よ。」
金色の瞳の奥に熱が帯びて行く。
ちろりと栄子の唇を舐める狐。
それに驚き身を引こうとする彼女の腕を掴む。
「俺から逃げてどうする。」
「い、いや…あの、ちょっと身の危険を。」
どきどきどきー…
心臓に悪い。
秀一より艶があるのは気のせいだろうか。
「…飛影には感じないと??」
「い、いやいや、そういうわけじゃなくて、飛影があんな事するなんて思ってなかったから-…だって、今までそんな素振り全然見せなかったんだよ??それなのに-…」
ふいに彼の指が唇を掠める。
「秀一もそうだっただろう。」
「…あ…っ。」
「おまえは一度どうなるか分かった方が良いみたいだな。」
唇に触れていた狐の親指がそこをゆっくりとなぞる。
そして、近づくのは妖艶な金色の瞳。
「…俺はここ最近一番機嫌が悪い。」
どこか苛立ったその瞳の奥に籠るのは情欲の熱。
「く、蔵馬??冗談ー…だよね?」
本能とは時に凄い。
彼が何をしようとしているのか、言わずとも感じる。
体を後ろに逸らすも狐はずいっと身を寄せて来る。
(やばい!!)
追われればさらに身を反る。
しかしその姿勢にも限界があり、いつしかその反る体制の上に狐が見下ろす形となる。
さらりと絹の様な銀髪が顔に掛かる。
艶やかな細まる金の瞳が妖しく光る。
形の良い口元が弧を描き、覗く赤い舌がゆっくりと唇を舐める。
「なっ…」
(やらしい、やらしすぎる!!)
至近距離では耐え難い狐の色香にクラクラしだすも、彼の唇が彼女の耳元で囁く。
「機嫌を治す方法をおしえてやろうか?栄子。」
艶を含んだ低い声。
唇に触れていた指が頬をなで首筋に落ちる。
「せ、選択肢は…」
「今から考えろ。」
熱が篭る金は微かに濡れた彼女の唇だけを見つめる。
「あはははっ、でもね蔵馬この前約束し-…っっ!!」
そんな空気を変えようと空笑いをする彼女だったが、唇の開く隙を逃さず狐はそこに優しく噛み付いた。
始めなど構わない深い口付け。
角度を変え舌を絡める狐。
熱を持つそれは艶かしくも切なく動き、ただ口内を貪り、彼女の舌を逃がさないとばかりに追う。
「…んっ-…」
眉を寄せ彼女の口から微かな声が漏れるも、狐は足りないとばかりに深く深くさらに求める。
そして、緩まる胸元に彼女が気づいた頃にはすで遅し。
いつの間にか背に回された狐の手が慣れた様にドレスのファスナーを下げて行く。
「く、くら-…ま、待って-…っ」
背に当たるベットの感触に思わず身が固くなるも、ふいに太ももを撫でられる感触に一気に力が抜ければそれを見逃す狐ではない。
裾をたくし上げれば、太ももから腰までの曲線を丁寧に撫であげられ、切なげに身を震わせ出来た足の隙間に手を差し込めば内太ももに手を這わせる。
「ちょっ…だ、だめ-…」
ぞくぞくと体の奥が熱を持ち震える。
狐が胸元に口付けを落とし舌を這わせば、次第に暴かれるドレス。
行き過ぎた彼の行動にイヤイヤと首を降る。
「もうしゃべるな。」
どこか焦りを乗せたらしくない狐の熱の籠る声。
人より冷たい手が暴かれた胸の形を確かめるように動く。
「ま、まって、本当に、やだっ…」
ぞくぞくと何かが体の奥から駆け上がる。
痺れるその感覚に体が思うように動かない。
だが、これ以上は-…
止めなければと狐の頭を押さえる。
未だ意識が朦朧とする中、顔を上げ自身の唇をぺろりと舐める妖艶な狐に、再びふるふると首を振る。
-…これ以上は、だめだ。
「…ここまで煽っておきながらか?」
(煽ってなんかいない~!!!)
眉を寄せ熱が籠る金色の瞳はどこか余裕が見られない。
未だ、欲を乗せた色気ある眼差しが栄子を捕らえる。
いつも落ち着きを払い冷静な彼には似つかわしくないその様子に、栄子は息を整えながらも何度もこくこくと頷く。
それに、少し苦しげに眉を寄せる狐だったが、瞳の奥に見える熱が冷める事は無い。
瞬間ざらりとした熱い舌が彼女の肌を滑る。
同時にドレスの下から這い上がる手が下着の上から隠された場所を撫でれば、びりびりと体の奥から電気が走る様な感覚に襲われる。
「ひゃっ…や、やだ-…」
思いがけない刺激に、弓なりに体がそる。
「これ以上焦らすな。」
狐の表情にも声にも決して余裕はない。
どこか焦る狐の様子。
暴れる彼女の腕を掴み、逃がさないとばかりに再び深く唇を塞ぐ。
「や、蔵馬…!!!」
「おまえは-…」
苦しげな声が彼女の耳に入る。
「おまえは俺の女だろう?」
切なげな金の瞳が真っ直ぐに彼女を見下ろす。
「…くら、ま??」
「どうして拒む。愛しいと思うから抱く。それはだめなのか?」
苦しげに囁かれる低い声。
金の瞳は見たこともない程切なく揺れる。
「手にいれたと舞い上がっていたのは俺だけか?おまえは俺を求めてはくれないのか?」
「……。」
「俺はおまえのすべてが愛しい。」
「っ!!!」
頬を冷たい狐の手が優しく撫でる。
「逃げないでくれ。」
『逃げないで-…栄子』
秀一の声と重なる。
そう彼は蔵馬であり秀一。
首筋に落ちる狐の唇。
止まっていた彼の手が再び彼女のドレスを暴き肌を滑って行く-…
「蔵馬は…約束、守ってくれないの??」
それに彼の手が止まる。
「私は…あなたが好きだよ。それは本当で、大事だよ。でも-…」
「……。」
「私は蔵馬みたいに長生きじゃないから…あなたの気持ち全部分かってあげれないけど、私はこれからの人生、全部秀ちゃんに…蔵馬にあげるつもりなんだよ??一緒に生きて行くつもりなんだよ??」
「…栄子…。」
「私は残り全てをあなたと過ごすつもりだし、ちゃんと覚悟したんだよ。だから…」
「私は全部あなた達のものなんだよ??」
ふわりと笑みを浮かべる彼女に、狐は目を見開く。
「……。」
「だから-…全部あげるから、もう少し待って。」
いつの間にか開放された彼女の手が彼の頬に伸びる。
切なげに熱の籠る金色の瞳が彼女を見下ろす。
「…お願い、蔵馬…。」
触れれば金色の瞳がさらに細くなればゆっくりと伏せられる。
身を起こす狐。
彼女に背を向ければ額に手をあて微かにうつむく。
そして「すまない…」と低く言葉を発せばそのままベランダへと向かう。
それに驚く彼女は、慌ててドレスを直せば、その背中を追う。
「ど、どこいくの!!??」
一体どうしたというのだろうか。
何かまた地雷を踏んでしまったのだろうか…
「……。」
ベランダから庭へと飛び降りる狐。
それに彼の唐突の行動に意味が分からず待って!!…と声を掛け柵から身を乗り出すも、彼の姿は闇にかき消されていくのだった。
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