第65話 燻る片想い
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夕日が沈んで行く-…
ふらふらと城へ向かって森の中を歩く飛影-…
体中傷だらけの彼は今にも意識が飛びそうだった。
-…躯とは久々に本気でやりあった。
あいつはいつも俺の思考を勝手に読む
興味の無い事にはとことん見向きもしない奴が、わざわざ自分を煽りに来た-…
躯の言いたいことは分かる-…
俺は-…
栄子を好いている
否、それ以上だと言うこともすでに分かっている
だが、どうしようもない想いもあるのだ。
焦がれても彼女には好きな男が居て
尚且つその男は自分の仲間だ
否、仲間なのが問題なんかじゃない
そんな理由で遠慮するほど自身は甘くもなければ、その程度で諦められる想いでは決してない
狐の彼女への想いはすでに呪縛。
切っても切れない恋慕-…
今、自分が彼らを切り離そうとすればあれは容赦なく自分を殺しに掛かるだろう
狐にとって彼女の存在は何ものにも代えられないただ無二の存在であり、狐の生命も危ぶめる程のもの
そして-…
それを認める事ができる狐。
自分の強みであり、最大の弱みでもあるとあれは分かっている。
自覚している-…
-…口に出せば引き返せない。
自覚していると分かっていても伝えればそれは自身の想いを認める事になる
「言葉」は言霊。
なぜ自分は強くなろうと思ったのか。
なぜ力を得ても心はこんな些細なことで脆く疼くのか-…
森を抜け、城の庭に着けば視界に入る-…
カーテンが風で揺れる狐の部屋-…
部屋の隅で口付けを交わす二人。
真っ赤になる彼女に、それに苦笑する狐。
ざわざわと胸の奥が騒ぐ-…
諦めたはずの想いに、拍車が掛かる-…
俺はこんなに諦めの悪い男だったのだろうか-…
そんな俺の瞳に気付いた栄子は、狐に体を支えられながらも驚いた様に目を見開いてこっちを見ていた。
俺は今どんな顔をしているんだろうか-…
何度も塞いだ想い…
鼻っから狐と争う気など毛頭ない。
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