第64話 独占欲と愛情
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どきどきどきどき-…
「はい、横になって。」
ベットに寝かされれば布団を掛けられる。
「まだ顔が赤いね。」
そっと額にあてられる冷たい手の感触。
香る甘い薔薇の香り-…
「タオル替えようか。」
そして、栄子の持つタオルを取ろうとする秀一に、ふるふると首を振る栄子。
「やだ、血ついてるし。見られたくない。」
(ただでさえ情けない姿なのにこれ以上は恥ずかしくて死んでしまう!!!)
「……そんなの、気にならないから。」
「私が気にするの!!!」
「………。」
タオルを取ろうとする秀一の手を払えば、ふいっと横を向き秀一に背を向ける栄子。
「……秀ちゃん、もう大丈夫だから。」
彼の顔を見るだけで、側にいるだけで今は心拍数が上昇するのだ…
これではいつまでたっても鼻血が止まらないのではないだろうか。
ならば、今は特に一人にしてほしい。
せめて、鼻血が止まるまでは。
しかし、そう思うのも無情-…
「……ねぇ、栄子。」
名を呼ぶ甘い声と、頬に触れる長い指。
それに、思わず視線を上げる栄子。
-…しまった。
そう思った時には遅かった。
しっかりとこちらを見下ろし揺れる翡翠の視線と目が合う。
ごくり-…
「飛影と最近、ずごく仲が良いみたいだけど。」
切なげに、そしてどこか苛つきを含んだ翡翠がじっと栄子を見下ろす。
(はぁ…やっぱり綺麗だぁ。鼻血でそうだぁ…)
「はっ!!!…い、今はやめて…しゅうちゃん…」
再び、ぐっとタオルを鼻に押し付ける。
自覚してからと言うものの彼の美しさと色気に拍車がかかった…(もちろん栄子目線)
「……この前も飛影と勝手に鴉の所へ行ったみたいだし。」
(やめてって言ってるのに…)
「その鼻血も何で出たの?彼と何かした??」
「……へ?」
思いもよらない言葉に思わず目が点になる栄子。
「彼と、何をしてそうなったの?」
頬を撫でる手がひどく冷たく感じる。
見下ろす翡翠は優しくも、その奥に感じるのは凍るような冷たさと妖しさを映し出す。
「何をして?って…ダンスレッスン。」
と、その他-…。
と思う栄子だが、目の前の男と普通に接する為の練習をしていたなどと言えるわけがない。
そして、その目の前のこの男の事を想像したら勝手に出た鼻血。
言ってみれば、飛影はまったく関係ない。
想像もつかなかった秀一の言葉になんと説明しようかと思考を巡らす。
「どうして部屋から出たときあんなに顔が赤かったの?」
「み、見てたの?」
そこまで見られていたのか。
さすがというべきか…
「……最近の君は、彼の臭いばかりする…。」
すっと彼の指が首筋に落たかと思えば、両手で頬を包み込むように自分の方へ向ける秀一。
確かに最近は飛影とよく会っていた。
相談ももちろんだが、なにより居心地が良く気兼ねしないとか-…そういった理由で、だ。
「いや、そ、そういうわけじゃ…ただ…」
(近い近い近いです!!!!)
心の中では常に悲鳴が上がる。
「ただ?」
栄子の顔を覗き込むように顔を近づける秀一。
「飛影が一番、ら、楽で…」
「楽?」
それに怪訝そうに顔を歪める彼に、明らかに不機嫌だと分かる。
「…俺より、楽なの?」
「へ…??」
一体、目の前の幼なじみはどうしたというのだろうか…
確かに秀一は自分にとって家族のようで兄のようであんなにも楽だった。
だけど、今は明らかに違うのだ…
(この前、気持ち伝えたの…忘れちゃったのかな?)
「…秀ちゃんは、緊張するよ。だから、前みたいに楽じゃないんだよ?」
そうだった。
これもしっかりと伝えて置かなければ彼の誤解を生み兼ねない。
以前の自分と今の自分の状況の違いを彼には分かってほしい。
照れて恥ずかしがっているだけでは彼でもきっと意味が分からないだろう。
下手をすればさらに自分の不安要素も拡大してしまう。
「……それは、俺が君の事を好きだから、でしょ?でも、栄子は-…」
苦虫を潰したような表情を浮かべる彼に、呆ける栄子。
(やっぱり秀ちゃん、この前私が言ったこと忘れちゃったんだ…)
もう一回言えばいいのだろうか…
「あ、あの-…」
「俺は独占欲が昔から強いんだ。知ってるよね?」
どこか低い声色に切り替われば、至近距離で見下ろされる。
そっといつの間にかタオルを取られている事に気がつけば、栄子は驚いて鼻を隠す。
それに、くすくすと笑う秀一のその美しさに眩暈がする。
どこか冷ややかにそして妖艶に見下ろす幼なじみはまるで知らない男の人のようだ。
「秀ちゃん、怒ってる?」
「…彼のせいで君が血を流したかと思えば、腹も立つ。」
どんな独占欲だ!!
と内心突っ込みたくなる栄子だったが、その言い方ならば明らかにこの鼻血は目の前のこの男のせいだ。
「ねぇ、彼と何をしたの?」
妖艶な瞳はさらに栄子を追い詰める。
-…結局はそこが気がかりの秀一。
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