第64話 独占欲と愛情
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本当に君の頭の中が見てみたい
俺がこうして遠慮している理由を君は分かっているのか…
君の意思を尊重したいのは変わらない
でも-…
俺はそんなに辛抱強くない
そして、君は知っているはずだ
俺がどれだけ嫉妬深いか-…
*************
「いいかげんにしろ。」
低い声色が室内に響く。
それにびくりと肩を揺らす栄子。
彼女はソファの上で小さく蹲りながらもこの部屋の主を不安気に見上げる。
そこには腕を組みながら眉を寄せ明らかに不機嫌そうに見下ろす赤い瞳の男。
「うぅ…飛影。」
「何度も言わせるな。あとはおまえらの問題だろうが。」
と心底面倒臭そうに言う飛影。
「だって、躯さんはなんか珍しく忙しそうだし…驥尾ちゃんも全然構ってくれないし、蛍子は先に人間界に帰っちゃたし…。私、本当にどうしていいか…。」
-…何度同じ言葉を聞いただろうか。
まったく進展していない栄子の心情に飛影の苛々も限界にきていた。
蔵馬との恋愛相談を何が悲しくて聞かなくてはいけないのか。
(たいがいにしろ…)
「飛影にしか相談出来ないじゃん。」
「俺は意見を言っている…。」
「……。」
「普段通りが無理でも緊張しようが、倒れようが…好きならあいつの側にいればいいだろう。いまさら何かあっても嫌いになどあれはならん。」
この言葉も一体何度目だろうか…
彼は気だるそうにベランダに向かい柵に凭れれば指から火を出し煙草にそれを付けふかす。
「それよりもおまえはここに一体何をしに来たのか、本当に分かっているのか?」
「う……。」
眉を寄せ顔を歪める栄子。
それを冷ややかに見据える飛影。
彼女の身に纏う白いドレスに、ソファの下に脱がれたパンプス。
「おまえは何をしにここへきたんだ?」
そしてもう一度彼の低い声が上から振る-…。
数時間前-…
『ダンス…レッスン?…私が??』
この城の主は自分のソファに腰を下ろしながらも、そうだ…と楽しそうに瞳を細める。
そんな彼女に思いっきり顔を歪めさも嫌だと強調する栄子だが、ここ最近の自身の所業を思い出せば、NOとは言えない。
『散々心配させた上に、俺の約束まですっぽかしたんだ。』
悪戯に笑みを浮かべ言う躯に、やっぱり…と栄子はがっくりと肩を落とす。
『パーティでダンスは必須。淑女の嗜み、だろう?-…また俺に恥をかかす気か?』
『…はい。』
こんな事ならパーティーなど出たくない。
そう思うものの、自分の立場はそうもいかないらしい。
『なら、選べ。』
『はい?』
その言葉に意味が分からず顔を上げれば、妖艶に微笑む彼女の表情が目に入り-…
『おまえの講師を、だ。』
とても嫌な予感がしたのだ-…
そして、今に至る。
「おまえは本当に俺に面倒を持ってくる。」
「飛影ぇ…。」
「泣きまねなど通用せんぞ、馬鹿が。」
煙草を吸いながら呆れた瞳を向ける飛影。
-…躯に言われた。
指導してもらう講師を次から選べと-…
奇琳、飛影、黄泉、蔵馬から…
そこに躯が入っていなかったのはやはり彼女にしては珍しく忙しいらしく時間がそうそう取れないらしい。
普通に考えて、奇琳さんはパス。
少しのミスですごく怒りそうだから…。
黄泉さんはまだ慣れないっていうのもあるけど、どこか心を見透かされそうな気もすれば、威圧感を感じるし、やっぱりパス。
そんな消去方式で栄子が決めたのが、飛影だった。
ダンス事態踊れることが意外すぎるが躯の部下で、幹部ともなればそれくらいは付き合い上わけないのかもしれない。
いや、そもそもそういった催し事に彼が参加するのが驚きだが-…
「…さすが躯さんだよね。」
「なにがだ。」
「いや、色々。なんやかんだで飛影の扱いに長けているというか…。」
「よほど死にたいらしい。」
泣きまねの次はそう来たか…と鼻で笑う彼に、一気に嫌な汗が流れれば、ふるふると首を振る。
「蔵馬なら、喜んで付合ってくれるぞ?」
それにピクリと彼女の震える手が彼の視界に入るも、はぁ…と息をつき、栄子の前まで歩み寄り膝を付き栄子の手を下から掬う。
「……。」
「いいのか?俺で。」
下から赤い瞳が探るように栄子を見上げる。
「…うん、お願い。」
それに彼女は笑みを浮かべ頷いた。
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