第63話 曖昧な想い色
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『ごめんね、秀忠』
『ごめんなさいー…私-…』
-…分かっていた事だった。
否、あんな事がありながらも自分に会いに着てくれたことだけでも奇跡だ。
禁術の呪いはすでに解かれ、契約の関係はすでに一切無い。
身を隠そうと思えば隠せるし、自分を殺した所で彼女が死ぬことはもうない。
彼女は開放された-…
なのに、わざわざ自分を探し彼女は自分に謝罪をしにきたのだ。
そして-…
『ありがとう、私を好きになってくれて。本当に、ありがとう。』
感謝の想いまで-…
引き止める気はもう無かった。
否、もうそんな気にもなれなかった-…
彼女が今だ怯え、逃げようとするならばまた違ったのかもしれない。
しっかりと自分と向き合う彼女の瞳が脳裏に残る。
誰かと似ているその瞳-…
分かっている、その瞳はあれと似ているのだ。
(桃華…)
そう彼女のあの真っ直ぐに自分を見る瞳と。
それこそ、今はいない彼女と。
夕日が森の奥にゆっくりと下がって行く-…
先程までいたそこに居た栄子はすでにもういない。
自分の気持ちをしっかり伝えれば、笑って去っていた。
また会えたら嬉しいな…等と、
相変わらず残酷な言葉を平気で言っていたが。
瞳を伏せる鴉。
そして、ゆっくりと視線を上げれば森の奥に向けられる。
感じる気配-…
「…俺には支払える対価など、何もないのは知っているだろう。」
先ほどまではいなかった人物、それが鴉の黒真珠の瞳に映る。
「…俺に何のようだ。」
哀しみを含む鴉の瞳がそれを射抜けば、それは赤い唇で弧を描き静かに呟いた。
-…対価ならあるでしょう?…と。
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