第62話 居場所Ⅳ
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そして-…
落とされた幼なじみの部屋の前。
少し慣れた様で、足も普通に立てる。
(でも走るとまだこけちゃいそうだけど…)
飛影の姿はすでにない。
この場に下ろせば、自分は不要だと風の様に姿を消した。
側に居てほしい…とは言えなかった。
なんとなく、言える雰囲気でもなかったのだが、彼の纏う何かが口から出そうとしているその言葉を拒絶しているように感じた。
目の前にある彼の部屋の扉。
ノックをするべきだ…が、ノックをして彼がもしその『最中』で、裸で出てきたら…
「ショックだわ…」
そうショックだ。
今なら分かる、色んな感情を剥ぎ取った今の気持ちなら鮮明に自分の気持ちが分かる。
もちろん自覚しているのも大きいが-…。
(しかも、報酬だし、蔵馬だし…しっかり払いそう…)
この扉を開けてしまえば、この剥き出しになってしまった自分の心が無残にも砕けそうで-…
幼なじみにも戻れず
決まった関係にもなれず-…
自分が気付いたことにより逆に、彼が離れていきそうで-…
不安ばかりが脳裏を締める-…。
違う。
これは報酬なんだ!!!
もし、ここで情事が為されていようと関係ない。
(私は、決めたじゃない!!)
再び意を決して、扉をノックしようと手を伸ばせば、がちゃりとその手前で開くドア。
それに思わず硬直する。
そして、開いたドアから女性の香りが鼻を掠めれば、同時に現れる見知った顔に目を見開く栄子。
「せ…先輩!!!??」
「あら、早かったのね。もう来たの?迎えに行こうと思ってたのに。」
中原は自分の登場に驚くこともなくただ来るのを分かっていたのか、久しぶりね…と笑みを浮かべ-…
「私魔女なのよ、浅野さん。」
といきなりの衝撃告白。
だが、色んなことがありすぎた栄子にとって普段なら驚くことでも、今ならば納得もしてしまう。
ただ、人間界の身近にそんな人物がいた事に少なからず衝撃は受けるのは仕方が無いが。
「先輩が…魔女…。」
まじまじと魔女と名乗る自分の元?上司を見つめる。
ぽいと言えばぽいかもしれないが、見慣れた彼女をそういった目では確かに見難い。
「会社もやめてきちゃったし、こっちの本業でやっていくしかなくて…。て、そんなにじっくり見ないでよ、照れるじゃない。」
口元に指を当て、ふふふと微笑む彼女に栄子ははっと我に返る。
そして-…
「まさか、あなたがここにいるなんてね。驚いたわよ?」
艶やかな彼女の声には、不思議な違和感を感じる-…
「……。」
「どうしたの?」
首を傾げ瞳を細める彼女。
-…覚えている。
雨の中、あの時の知っている声は-…
そう、あれは-…確かに、彼女の声だった。
ぼんやりと彼女を見つめながら思考が頭を巡って行く栄子に、中原はくすりと笑みをこぼし瞳を伏せれば、部屋の方へ視線を向け栄子に「行きなさい。」と小さく囁く。
それに再びはっとし、彼女と部屋の中へと交互に視線を動かせば、彼女は「今は寝てるわ。」と妖艶な笑みを浮かべ呟いた。
それに栄子は全身の毛が一気に逆立つのを感じれば、青くなり急いで彼女の横を通り部屋の中へ入っていく。
そんな栄子の後姿を見つめながら-…
「足りない分は躯様にでも頼もうかしら…。」
魔界統一祝いに…と笑みをこぼし、彼女は部屋を後にするのだった。
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