第62話 居場所Ⅳ
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-…私ってなんて幸せものなんだろうな…って
目が覚めた瞬間に思った。
泣き喚きながら抱きつく蛍子…
その隣では彼女に呆れながらも「よくやった」と満面の笑みを向けてくれる幽助君に-…
(まだしっかり覚醒はしてないんだけど…)
涙目になりながらも真っ赤な顔でぷいっとそっぽを向く修羅君に、それを苦笑する黄泉さん
(目が覚めたとき修羅君のアップだったような…)
まだ眠たくてもう一度寝ようとすれば、何か言え…と不機嫌そうにデコピンしてくる躯さんに
(…躯さんの夢見たよね…確か…)
死んでもドンくさいのは直らんか…と瞳を細め皮肉を言いながらも優しい笑みを向ける飛影に-…
(…これって優しいのか?)
栄子様!!!!と相変わらずびっくりするほどの熱い抱擁をしてくれる驥尾ちゃんに-…
(あらら、こんなに泣いちゃって…てか、蛍子もまだ引っ付いてる…)
「みんな…た、ただいま?…なのかな?」
数ヶ月の夢?-…の中。
こちらでは一週間しか経っていなかったにも関わらずこんなにも大所帯で出迎えてくれる皆。
私って本当に幸せ者だな…と心から思う。
それに徐々に胸の辺りが熱くなっていけば、涙腺が緩みだらだらと涙が溢れて行く。
そして、どこか気持ちもすっきりとしているのはどうしてか…
それを読み取った様にこちらに笑みを向ける躯さんは-…
「覚悟したんだな。」
と頭に手を置き顔を覗き込む。
それに口を開こうと彼女と目を合わせば-…
「俺の嫁になることを。」
と、さらに「泣くほど嬉しいのか?」と、悪戯に耳元に息を吹き替け囁くものだから久々過ぎて悲鳴が上がる上がる。
それに、うるさい!!と一括する飛影だが、だからといって部屋から出て行く気配はない。
逆にこちらに来れば「体は大丈夫か?」と、体の事を気にかけていてくれる彼に再び涙腺が緩む。
「泣くな。」と眉を寄せる彼に、彼とも躯さんともあの世界にいたら会えなかったのだと改めて感じる。
この世界に居てよかったのだと-…
そして、皆に色々心配され、怒られ…からかわれ、怒られ…怒られ、遊ばれ…大いに遊ばれ(八割躯さんだが)。
(…心配されたの最初だけだ…)
そして-…気付く。
「-…秀ちゃんは?」
瞬間騒いでいた皆がぴたりと止まれば、あからさまに視線を逸らされ、幽助は小便じゃねぇか…と口元が引きつれば、ピロピロ口笛を吹く修羅…そして、おまえは気にしなくていいんだ、と頬を撫でる躯。
(躯さんのセクハラが以前より増してきてる気がするのは気のせいだろうか…)
それにしても、これは一体何だろうか…。
「どこにいるの?」
一番に彼にお礼を言わなくてはいけないのではないか。
聞くところによれば、やはり彼が自分を迎えに来てくれて連れ戻してくれたと聞いている。
そんな言葉に飛影ははぁ…と息をつけば-…
「部屋にいるぜ?…魔女と一緒だがな。」
と言葉を紡ぐ。
それに魔女?と首を傾げる栄子に、躯が頭を掻きながら苦笑しながらも続けてくれた。
「魔女と契約したんだ。おまえがいった世界は簡単にはいけなくてな、魔女の力を借りたって、わけだ。」
「…魔女の力?契約??」
契約という言葉はあまり好きではない。
それはなんなのだ?と顔を歪めれば、彼女から思いもよらぬ言葉が返ってきた。
「魔女の力を借りたら報酬を払うのが決まりだ。それ相当のものを支払わなければいけない。それをあれは今払ってるんだ。」
「今、支払ってる??」
(自分を救うために彼が魔女に報酬を"今"支払っている…?)
視線を泳がせば、修羅は少し顔を赤め俯き、幽助は空笑い。
蛍子もどこか静かに恥ずかしそうに俯き、躯はにやにやと笑みを浮かべ面白そうに栄子を見ている。
「…それって、何ですか?…」
「…まだ分からんのか?…おまえはもう奴と経験済みだろ、だったら分かるよな?」
さっきまで笑みを浮かべていた躯も、すぐにどこか不機嫌な表情になる。
「!!!!???」
それに一気に顔が赤くなっていく栄子に、まじ!!?と勢い良く振り返る修羅に、両頬に手を当て驚く蛍子。
飛影は息を付き、幽助はやぱ付合ってたんか…とうんうんと頷く。
「な、なななななな-…」
「言ったらまずかったか?…もう、いいだろうと思ったが。」
瞳を細め、笑みを浮かべる躯に、栄子はただただ口元をパクパクと開閉させる。
人前でこの人は一体何を言っているのだ。
デリカシーのかけらもないではないか。
「ひどい、躯さん!!こんな皆の前で!!!」
やっと出た言葉は大した内容も持たない言葉。
「覚悟したんならかまわんだろう?どうだった?良かったのか??」
「私途中で気を失って覚えてなんかいないもん!!!」
その瞬間周りのざわめきが消える。
「……ほう。」
細くなる躯の瞳、それがゆっくりと飛影へ向く。
「だから、言っただろうか。」
こんな場所で確かめるな…と呟く飛影に、躯はなるほど。と探るようにこちらを見据える。
「な、なによ-…気付いたら朝で…」
(もう、穴があったらはいりたい!!!)
「……いや、今怒りも一気に哀れみに変わったよ…いや、同情に変わったな。」
意味の分からない事を言いながら、どこか一人で納得する躯だったが、再びこちらをじっと見据える。
そして-…
「いいのか?」
ふとでた彼女の言葉に、栄子ははっとする。
「いいんなら、ほっとけばいいが。」
再び意地悪な笑みを浮かべる彼女に、栄子はうっとつまれば、視線を落とし布団を握りしめる。
「……で、でも-…」
「おまえが良いならかまわん。既成事実がなければただの幼なじみとかわらんしな。」
「…え-…」
顔を上げ目を見開く栄子に、さっさといかんと手遅れになるぞ?と瞳を細める彼女の言葉が再び耳に入れば、栄子は意を決して、よしっ!!と頷きベットから降りる。
だが、久々故か足がふらつく。
しばらく動かないとこんなにも筋肉とは低下するものなんだ…とどこか冷静に思いながらも、そんな自分を支えてくれる飛影。
-…自分を彼の部屋の前まで運んでくれるという。
「わ、私!!お礼を言いに行くだけだから!!!止めに行くわけじゃないから!!」
今だどこか素直になれない栄子は顔を真っ赤にしながらもそんな言葉を吐く。
「わかったから、じっとしておけ。」
それに、呆れながらも相槌を打つ彼は、栄子の脇の下と膝の下に手を回せば軽く抱えあげるのだった。
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