第5話 出会い
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「むむむむ…」
ベッドに寝転びながら先日購入した本を読む栄子。
彼女の顔は青ざめたり赤くなったりしていた。
持っている本の背表紙にはこう書かれている。
『男を虜にする方法』
内容は思っていた以上に過激で、栄子自身全く知らないわけではないが、男女の営みの事まで事細かく書かれていた。
確かに本の題名とはあっている、間違ってはいない。
もう少しちゃんと中を見るんだった…
そう思いながらも栄子はページを捲っていく。
「……か、過激…」
興味深い内容ではあったため、栄子は目が離せずにいた。
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『…初めてか?』
ニヤリと意地悪そうに笑う彼。
その黒髪から雨が滴り落ち少し色っぽくも見えた。
しばらく何が起こったのか分からず放心状態でいた私は彼の顔の近さにはっとする。
『なっなっな…なにするのよ!いっいきなり…』
真っ赤になっていた私は手で自分の口を押さえて、あたふたしながらも猛抗議をしていた。
『迷惑賃だ。貴様、俺がどれだけ探したと思っている。』
さっきとは違い、少し赤みがかった鋭い目で睨まれ、私はうっと詰まる。
確かにこんな雨の中、こんな森の奥まで探しに来てくれて変な奴らから助けてくれた事は恩に着る。
だが、これはまた別だ。
『…初めてだったのに。』
すると彼は、ふんっと鼻で笑う。
『秀ちゃんとやらはしてくれなかったんだな。』
満足そうにそう言うと、地面に座り込んでいた私の前で背を向けて屈んだ。
『…なにしてるの?気持ち悪いの?』
背中をさすってあげる。
私とキスして気持ち悪くなったのだろうか、ファーストキスを奪われた上、奪われた相手に嫌がられているのだろうか…ショックだ。
『…ばかが。早く乗れ。』
『…え…乗る?』
どこに?
首を傾げる。
雨の勢いが増し始めた。
苛ついた彼は、向き直ると私の腕を掴み自分の肩に回すと軽々と持ち上げた。
『ちょっ…ちょっと…』
情けない事に私は彼の肩に体を預ける形になっていて、私の目の前は彼の背中で、太ももからふくろはぎにかけては前で彼が支えている。
『雨がひどくなってきやがった、飛ばすぜ。』
『エッチ!おしり触らないでよ!!』
『……置いていってやろうか?』
『……いえ。』
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過去の出来事を思い出し苦笑する栄子。
そっと開いていた『キスの仕方』のページを閉じる。
懐かしい思い出だ。
落ちた場所が彼のいる世界でよかった。
彼は元気だろうか。
離れていても仲間だと言ってくれた。
消える瞬間に見た彼の驚いた顔…
そして、手を伸ばし『いくな!』と顔を歪ませた。
一瞬の出来事だったためちゃんとお別れもできなかった。
彼はちゃんと妹を見つける事が出来たのだろうか。
もう一度会えたらきっと私は泣いてしまうだろう。
『おまえは仲間だ!!』
彼の悲痛な声が蘇る。