第60話 居場所Ⅱ
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- 本戦トーナメント会場 -
「よう!黄泉!!久々だなぁ!って朝飯であったか?てか、やっとだなぁ!!本戦!!」
幽助は見知った後ろ姿を見つければ、振り返る彼に「まじ長かったな!!」と笑いながら彼の肩に手を乗せる。
それに黄泉は本当だ…と苦笑するものの、疲れているのかどこか雰囲気の違う彼に幽助は首を傾げる。
どこか心ここにあらず…の様に感じるのは幽助だけだろうか。
そして、気付く。
「あれ?修羅は?」
それにさらに表情の曇る黄泉に、今日はいやにわかりやすいな…と内心驚く幽助。
「…朝からいない。最近はろくに顔も合わせていない。」
「へぇ…喧嘩か?…でも、あいつ今日楽しみにしてたんだろ?」
そうなのだ。
予選を通過した修羅は暇を持て余していた。
早く本戦にならないかと、早く強者と、黄泉や幽助達に当たらないかと待ちに待っていた少年だ。
あれほど楽しみにしていた行事に出ないとは不可解だ。
まだ試合自体なかったとしても、相手は今日決まり発表されるのだから。
「…喧嘩等ではない。-…あの人間の娘があぁなってからだ。今日もあれの側にいるんだろう。」
はぁ…と息をつき微かに肩を落とす黄泉。
そして、初恋にしては参ったな…と呟く。
それに「まじか!!!」と目を見開き驚く幽助。
「本人に自覚はないが、あの娘の前になると修羅の感情に変化が見れた。俺としては複雑だ。」
「まぁ、蔵馬を相手にしなきゃ…だしな。」
ははは…と空笑の幽助の口元は心なしか引きつっている。
「だが、見方を変えれば応援もしたくなる。何事も気まぐれで飽き易い修羅には、それくらい執着するものがある方が、苦手な相手にも試行錯誤で挑戦する気にもなるやもしれん。」
顎に手を置き考える黄泉に、蔵馬と恋敵は辛いぜ?とどこか遠い目をしてぼやく幽助。
そんな中、司会者の声が響く-…
『では、本戦トーナメント対戦者達を発表します!!えぇ-…第一試合…』
腕が鳴るぜ…と、笑いながら腕を回す幽助。
「俺達くらいまともに試合しねぇとな。」
「そうだな。…ところで、おまえの嫁の姿が見当らんが…。」
観客席に意識を向ける黄泉に、苦笑し息をつく幽助。
その様子に黄泉はなるほど…と納得する。
「あの人間の影響力は本当に驚きだ。…飛影もその口か?」
「さぁな。あいつは邪眼があるし、この場にいなくても不思議じゃないぜ?」
便利でうらやましいぜ…と笑う。
「……。」
「蔵馬…だからな。問題ない。」
少し瞳を伏せ笑みを浮かべる幽助に、黄泉も笑みを浮かべた。
-…黄泉は内心思う。
人間一人の命がこうも周りを影響させるとはと。
自分の友人、そして息子までにも影響を与える人間の娘。そして、敵対していた躯にさえ闘志を喪失させるほどのショックを与えている。
変わったのは自分よりも周り。
だが、それに不快になる事は無い…
そして、最近よく思うこともあるのだ…
「妖怪はいつまで存在する生き物なのだろうな。たまに思うよ、人間くさくなっていけばいくほど、そのうち妖怪ではなくなってしまうのではないかと…。」
「考えたことねぇけど、あんま深く考えんなって。ふけるぜ??」
あっけらかんとした返答。そして対して興味も持たない目の前の男。
それに苦笑する黄泉。
元よりこの男こそに自分の価値観を変えられたのだ。
揺るがない考え方、物の見方…損得と有利な戦い方。
それが全て塗り替えられた。
基盤は自分のものでも、感じる世界が変わった。
それこそ自分の為に生きたいと思えたのだ。
ある意味、目の前のこの男は自分に正直でわがままだ。
ある意味自分の欲に貪欲なのだろうと思う。
それこそ自分以上にだ…。
「無駄に生きなくてよかったよ。俺も…蔵馬も。」
「?…何いってんだ?おめぇ。」
「まぁ、蔵馬の場合はあれの影響も大きいだろうが。」
「??」
首を傾げる幽助に、黄泉はただ薄く笑みを浮かべる。
そして…そんな二人に近づく見知った気配。
「おせぇぞ、おめぇ。」
「やっときたか…。」
やれやれと息をつく二人の側に苦笑しながらも近づく女、-…躯。
「なんだ?俺のことを待っていたのか?悪いが二人一度に相手は出来んぞ?」
悪戯にそして妖艶に笑みを浮かべる彼女に息をつく黄泉。そして、冗談きついぜ。と笑う幽助。
今は無くも、魔界三大勢力とも言えたこの三名。
周りから注目を浴びるも、それは以前の比とは明らかに違う。
三人の姿を見つけるなり、久しぶりだと近づく者。
笑い合い肩を組む戦友達…。
それは以前の魔界のそれとは明らかに違ってきていた。
「時代が変われば人も変わる、だな。」
戦友と肩を組む幽助を見ながら、静かに呟く黄泉の言葉に、躯は、そうだな…と瞳を細め笑みを浮かべた。
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