第57話 解かれる呪縛
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-霊界-
わなわなと拳を握り震えるコエンマ。
彼の目の前には原形を留めていない最下層の扉が無残に崩壊し瓦礫と化していた。
目に見えるほどの瘴気がそこから充満し外に溢れ出てきている。
本来ならばこのような状態ならば死霊がここぞとばかりに自由を求め溢れ出て周りを食らい尽くしてもおかしくはないものの、そんな気配はなく静かなものだ。
もちろん表向きは、だが。
奥ではちかちかと閃光が走り激しい爆発音や悲鳴が聞こえる。
妖怪のものか…それとも具現と化した奴らのものか。
-…どちらにしても大問題だ。
コエンマは一度瞳を伏せるものの、治まらない怒りにキッと目の前の人物を睨む。
それに最下層の入り口であっただろう扉の瓦礫の端に凭れる人物は彼に向けて"彼女"に似つかわしくない優美な笑みを浮かべた。
「よう、コエンマ。」
透き通るのに、威圧的な声色。
「これは…これはどういうことなんじゃ!!??」
あってはならない。
絶対あってはいけないのだ。
魔界と霊界との契約にある-…
霊界の管轄場所に手を出すことは契約違反。
魔界と霊界の均衡を保つ為に互いに決めた規約の一つ。
「答えろ!!!躯!!!!」
それに、瞳を細め妖艶に笑みを浮かべる躯。
「あぁ、妖怪達が中で戦っている。」
「躯!!!貴様!!自分が何をしているのか、分かっているのか!!?ここは霊界なんじゃ-…」
「霊界?ここが?」
躯の瞳が妖しく光ればコエンマにゆっくりと近づく。
それに思わず後ずさるコエンマに、彼の後ろに隠れるジョルジュ。
そして側に控えていた特防隊は霊界の主を守ろうと前に出ようとするもそれはコエンマの腕に遮られる。
それを楽しそうに見る躯の口が開く。
「霊界なわけないだろう?こんな荒れ果て死霊が暴れまくるような場所。ろくに監視も出来てないじゃないか。霊界の管轄地だと言うならばこれは明らかな問題だぜ?」
「!!!???」
「霊界は地獄の層を管轄し監視するんじゃないのか?ここにはろくな魂ひとつないぜ?混ざりに混ざって管理どころか放置じゃないか…。ここが本当に霊界なら…」
「む、躯…き、貴様…」
「魔界との契約違反だとは思わんか?コエンマ。」
くすくすと瞳を妖艶に細め笑う。
「安心しろよ。ここはたまたま俺が見つけた魔界トーナメントの試験会場だ。精神の欠片さえないただの死霊と化した化け物ども全部排除してやるよ。」
「と、トーナメント、だと?」
しかも"たまたま"だとはよく言えたものだ。
確実にここを狙っていた確信犯なのに、だ。
コエンマは顔を顰める。
「あぁ。死なず定められた数の死霊を倒した奴が次の試合チケットを獲得できるってわけだ。」
簡単だろ?と笑みが深くなる。
「そ、そんな勝手な事…」
「コエンマ、俺はどっちでもいいんだぜ?」
躯の笑みが深まれば彼女の周りに邪悪な妖気が淀めく。
「-…!!!」
「俺は霊界ともめたいとは思わない。だがここが『霊界』なら、魔界側にはもめる理由は十分にある。」
言葉とは裏腹に面白そうに瞳を細め、こちらに手の平を向ける躯に息を飲むコエンマ。
「もう一度だけ聞くぜ?」
躯の声が低く響く-…
「-…ここは霊界じゃないよな?コエンマ。」
そう不敵に微笑を浮かべ彼女は呟くのだった-…。