第4.5話(妖狐編I)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ずっと誰かに似ていると思っていた。
ちょっとした仕草や自分に見せる優しい瞳。
本を読むときなんか特に彼と被っていた。
「秀ちゃんみたい…」
目の前で本を読む蔵馬を見て机に突っ伏しながら顔を上げている栄子は呟いた。
「……誰だ?」
金色の瞳が上がる。
「幼なじみ。」
ほぅ、と彼は目を細める。
「秀ちゃんはかっこいいし頭もいいんだよ。しかもモテるし。」
「私みたいだな」
「蔵馬自信過剰~!」
クスクスと楽しそうに笑い蔵馬は栄子の前にしゃがむと視線を合わせる。
「おまえから男の名を聞くと幼なじみでも腹が立つ。」
「嘘、笑ってるよ?」
「腹は立つが…おまえはここにいるからな。幼なじみは何もできん。」
「……。」
じっと蔵馬の目を見る栄子。
「どうした?」
「秀ちゃんがこの世界にいたら、秀ちゃんも殺してた?」
悲しみを含んだ探るような瞳。
狐の金色の瞳が一瞬見開く、だがゆっくりと影を落とした。
「…そうかもな。」
その言葉を言った後、一瞬栄子を囲む空気が重くなった気がした狐だったが、そのまま続ける。
「他の男がおまえに触れるかと思うと殺意に狩られるのは事実だ。おまえに触れていいのは俺だけであってほしい…。」
「……だから、秀忠も?」
栄子の瞳が揺れる。
しばらく見る事のなかった、悲しみと憎しみの深い瞳。
「本当にそれだけ?」
…そして新たに含まれた色。
それは他に理由があったのでは?という疑いの色。
今までにはなかったもの。
栄子はこの狐と過ごした月日の中で彼に対する何かが自分の中で少しずつ変わってきていた。
だから思う。
他に何か理由があるのではないかと。
「……。」
「本当に、それだけ、なの?」
探るようなそれは、狐の心を痛ませる。
「それだけだ。」
残酷非道な妖怪。
冷酷で頭が切れる美しい妖怪、妖狐蔵馬。
盗賊として魔界と人間界を行き来し、仲間に慕われ信頼され頭を努めている彼。
一度蔵馬に狙われた宝は例外なく必ず奪われる。
宝石であろうが、珍しい妖怪であろうが、幻と唄わられた財宝であったとしても。
すべて手に入れてきた。
「…そっか。」
栄子の瞳から希望の色が消える。
そんな彼女の頬に狐は手を添える。
ビクッと肩を揺らす栄子。
狐を見る瞳は戸惑いと悲しみの色を含んでいた。
「俺のものになれ。」
栄子は目を見開く。
「えっ…」
「おまえが欲しい。」
狐の真っ直ぐな瞳が栄子を捕らえる。