第52話 瞳の裏側に映るもの
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この瞳には本当に魔力でも宿っているのだろうか…
見つめられると捕らわれる。
全て見透かされる翡翠-…
栄子の瞳が大きく開いたまま固まる。
そしてそれとは逆に心臓は大きく鳴り響けば手にはじんわりと汗を感じる。
栄子自身、驚くほど動揺しているのだと自分自身で分かるほどだった。
「もう隠さなくていいよ、栄子。」
腕を掴んだまま起き上がる彼。
その様子に全部知っているのだと…理解した。
隠しきれてない部分もあったのかもしれない、そして例え隠せていたとしても、彼ならば全て見透かしていたのだろうと。
今になって彼ならあたりまえだと気付く。
だけど-…
「…うん、会ってきた。しっかりと彼と話せてなかったから。」
そう微笑む彼女に、怪訝そうに眉を寄せる狐。
「ちゃんと話したかったの。それだけだから…ごめんね。沢山心配かけて。でも、ちゃんと帰って来たから心配しないで?」
「…なんで帰れたの?」
「…え?」
掴まれる腕に力が籠る。
「い、痛いよ…」
「どうして君をすんなり帰す?」
優しい声色。
だが顔を上げたそこにある翡翠は決して笑ってはいない。
狐は知っていたのだ。
彼女の気配が瞬時に消えた事も、持たせた自分の妖気を辿れば、会ったのが鴉だったと言う事も。
躯の城への侵入は不可能だとしても出る側ならば制限もない。
だからこそ彼女自ら鴉に会いにいったとのだと分かった。
そして、あんなにも栄子に執着を示す鴉が彼女を帰すには理由があるのだ。
それが分かる狐だからこそ黙ってなどいられなかった…。
栄子の瞳に映るのは切なげに揺れる翡翠。
心が痛い-…
溢れる想いが口から出そうになるもそれを言う事は決してない-…
否、言えるはずもない。
彼女は掴まれた腕に目をやれば、瞳を伏せる。
「私は-…」
これ以上-…
私にあなたへの想いを与えないで-…
これは私の罪
これは私の懺悔
これ以上-…
「秀忠と一緒にいたいの。」
あなたの側にはいられない。
視界の端で微かに揺れた彼の肩が見えた。
「…秀忠を、愛してるの。」
どうか…
私の心を見透かさないで-…