第52話 瞳の裏側に映るもの
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「…断ると、言ったら?」
躯の静かな声が室内に響く。
「…断る理由がおありで?」
「なぜ俺がそれを言う必要がある。おまえがなぜそれを知る必要があるんだ?」
「…聡明なあなたなら分かってくれると思っていたのですが。」
「…なんだと?」
怪訝そうに眉を顰める躯に睨まれれば女は妖艶に瞳を細める。
「奇琳からお話は聞いております、随分例の本を気に入って頂けた様子で。」
「…!!!」
「…まぁ、そこからでも察しはついてはいたのですが…一応確認をしたかったので。」
「……おまえ-…」
「彼女に読ませたのは…どうしてですか?…あの子に興味があったからですか?…あら、違いますわね。あなたは知ってらした。」
「彼女の記憶にちゃんと残っていたから、でしょう?」
「…まさか、おまえは…」
大きく目を見開く躯に、目の前の女は瞳を細める。
*******
「おまえが決めろ、栄子。」
紫掛かる黒真珠の瞳-…
それがまっすぐに栄子の瞳を捕らえる。
『許さない…』
『許さない…』
…眩暈がする。
亡骸達の声なのか…秀忠の声なのか。
『許すものか…』
それはずっと栄子を繋ぎとめる。
真っ赤な赤い月が脳裏を掠める。
許しを請う声と
愛を囁く男の声-…
『許さない-…』
『愛しているのに…』
『先に逝くなど許さない-…』
真っ赤な真っ赤な月-…
記憶の隅にある記憶は混ざって行く
「私を受け入れろ、栄子よ。」
再び耳に掛かる息に低い声。
現実と夢の狭間で揺れる-…。
今自分はどこにいるのか-…
現実なのか夢の中か-…
唇に触れるのは冷たい唇。
「なぜ、泣くのだ…。」
視界が霞めば、切なげに揺れる黒真珠が映る。
血の…
香りがする-…
それは現実か幻か-…