第51話 幸せの欠片達
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奇琳の声が外から聞こえる。
珍しい、あいつがこんなに大声を上げるなど…栄子か?
ありえなくもないが、最近のあいつは大人しい為、きっと違うだろう。
気だるそうにベットの上で上半身を起こし扉に目をやる躯。
近づく奇琳の声に、カツカツと規則正しくあるく軽い足音。
そして…自室の扉をノックし、一声かけるとゆっくりと開く。
「お久しぶりです、躯様。」
入るなり品良く微笑み、少しばかり頭を下げる女。
「……。」
「あら…体調は未だ不調でございますか?」
答えない躯に、入ってきた女は微笑みながらも首を傾げる。
そしてその後ろから息を切らせ入ってくる奇琳。
「む、躯様!!申し訳ありません!!止めたのですが!!」
隣の女を睨みながら言う彼に、躯は呆れながらも「かまわない」と奇琳に下がるように言う。
渋々下がる奇琳に勝ち誇った様に笑みを浮かべる女…
奇琳の姿がなくなれば、女は再び主に視線を戻し微笑む。
「ふふ、邪魔者はいなくなりました。」
「…よく言うぜ。」
ベットの上で肩膝に腕を掛けたまま、自室に訪問してきた人物を気だるそうに見上げる。
「失礼いたしました。まさか、お休みになっているとは思わなくて。にしても、まさか陰陽師の香でここまでダメージを受けるなんて、躯様らしくない。」
「……奇琳か?そういえばたまに会っているみたいだな?」
この女と奇琳が昔から知り合いであることは知っている。
それでも主の情報を易々と多弁するだろうか。
「いいえ。私のほうで拝見させて頂きました。奇琳様とは前日お会いしましたが…それは別件での事。」
「別件…ね。…で?」
なぜここに来た?
躯の視線が再び目の前の女に向く。
「色々用事も終わりましたので。」
「それも依頼か?」
「仕事ではないですが、まぁ…ちょっとした私用です。」
「…へぇ。俺が呼んでも来なかったのはそういう理由か??あれだけ人間界でゆっくりしておきながら、良い度胸だな。」
「あら、ちゃんとこうして来たのにそんな言い方はどうかと。それに躯様の依頼が私の私用より少し遅かっただけの事。なんでも順番ですわ。」
「…仕事より私用を取るのか、おまえは。仕事する気ゼロだな。」
ちっと舌打ちする躯に、そんな事ありませんわ…と笑う女。
「そんなにおっしゃるなら…今からでもお受けしましょうか?…少しはサービスさせて頂きますわ。そうですね、今ならどんな依頼も躯様の片腕一本でお受けします。」
「…帰れ。」
ふざけるのは好きだがふざけられるのは嫌いな彼女。
手で払う仕草をすると笑う女。
「それはそうと…躯様、こちらに私の後輩がお世話になっていると聞いたのですが…。」
「……おまえ、とことん食えん奴だな。」
眉を忌々しそうに寄せれば、はぁ…と大きく息をつく。
「あら、分かってらしたのですね。さすがです、躯さま。…それで確認したいことがございます。」
「…胡散臭い奴め。」
そう気だるそうに言う躯に、酷いです…と言葉とは裏腹に楽しそうに微笑み、女は妖艶に瞳を細めた。
女は栄子の上司、中原…その人物であった。