第51話 幸せの欠片達
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「ねぇ、飛影って今幸せ?」
それは唐突だった。
珍しく天気が良いから城の屋根で昼寝をしていたところにやってきた栄子。
屋根の上を怖々とつたって来るものだからよっぽどの用事でもあるのかと思ったら、そんな言葉だ。
そんな事を聞きにわざわざ来たのか?
おまえが今にも落ちそうで柄にもはらはらした時間をかえしてほしいぜ。
そんな自分の心配を他所に隣に腰を降ろすと、栄子はそこに寝転ぶ。
そして、こちらを見るなり、もう一度同じことを聞く。
幸せ、だと?
「考えた事もない。」
「…そっか。」
あっさり返され…無言になる栄子。
一体何を聞きたいのか。
怪訝そうに眉を寄せる飛影に栄子はふふふと笑い彼を見る。
「何が、おかしい。」
「いや、やっぱはじめの頃より、飛影ってかわいくなったなって思って。」
「……かわいい、だと?」
言われた事等生まれてこのかた一度もない言葉。
第一言われた所で嬉しくもなんともないが。
「おまえ、そんな事を聞きにわざわざ来たのか?」
気だるそうに上半身を起こす飛影。
どれだけ暇なのか。
いくら休戦だと言っても事態は何も変わってはいない、特に狙われているのはここにいる当人なのだから。
珍しくショックを受けていた躯の様子が脳裏に浮かぶ。
自分がついていながら栄子を危険な目に晒してしまったと…切り替えは早くとも実際自己嫌悪になっていたのは事実。
「うん。」
未だ嬉しそうに笑みを浮かべながら瞳を閉じる栄子。
そして…
「幸せだなぁ…」
と呟く。
「…おまえ、そんなに仕事が辛かったのか?」
そんなに過酷だったのだろうか。
「寝れない日は辛かったかな。でも楽しかったよ。」
「……。」
「ねぇ、飛影。」
薄っすらと瞳を開きこちらを向く。
日差しが当たって少し眠いのだろうか。
すでに目がうつろだ。
「…この前、蔵馬との試合…邪魔しちゃってごめんね。」
「…そんなぼけた面で本気で謝る気があるのか?」
「うん。ちゃんと謝りたかったんだ。ずっと…でも、どっちにしろ私は止めに入ってた。あんな大怪我見てられないから。二人にはあんなに怪我してほしくない…から。」
「……。」
「本当にごめんね。」
「気にしてない、謝るな。」
さすがの飛影も最近の事態にそれどころではないと理解していた。
第一ずっとあのままで居られるはずもない。
そういえば、よかった…と安堵の色が瞳に浮かぶ栄子。
「…私ね、飛影と友達になれて本当によかったよ。すごく幸せだよ?」
「…そうか。」
「飛影は?」
「なぜそんな事を聞く。」
「同じだったら嬉しいなって…。」
今にも落ちそうな彼女の瞳。
「……。」
「飛影?」
「おれはとんだ迷惑だぜ?」
ふんと鼻で笑い両手を後頭部で絡め再び寝転ぶ飛影。
それに思わず彼らしいなと笑みを浮かべるものの栄子の思考は日向の暖かさに緩やかにまみれ落ちて行くのだった。