第4.5話(妖狐編I)
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宿屋で住み込みで働き出して一週間。
元気良くお客様に挨拶。
「ありがとうございました~!」
玄関から出て行くお客様をお見送りした私は客室を掃除し、食器を洗いに行こうと厨房へ向かう。
「栄子ちゃん、こっちも頼むよ~!」
「はぁい!!」
この年で働くなんて私の時代なら考えられない。
だけど、この時代は幼い時から沢山の人たちが働いている。
元の世界へ帰りたいけど、帰れない。
私は強く生きていくしかないんだ。
蔵馬にはどうやらここはバレていないらしく、街が盗賊に襲撃されている様子もなく平和だ。
「栄子ちゃんはよく働くねぇ。君はいい子だねぇ。」
宿屋の亭主は栄子を舐めるように見る。
この亭主は苦手だ。
この間、亭主の部屋から住み込み仲間の女の子が泣きながら走って出て行くのを栄子は見ていた。
何かもめたのだろうか、その時に叫んでいた亭主の罵声。
乱れた少女の服。
あとで話を聞いたら彼女は叱られた、とそれしか言わなかった。
よっぽどひどく怒られたのだろうか。
しばらく彼女の体の震えは止まらなかった。
「そういえば、最近ここらへんでよく妖がでるそうだよ?」
「あ、あやかし?」
亭主と話したくなくても雇い主な為、嫌でも話さなくてはならない。
しかし、この内容は今一番気にかかっているものだ。
(まさか…蔵馬?)
「おや?顔色が悪いけれど大丈夫かい?」
亭主は栄子の頬を触ろうと、ごつごつとした毛むくじゃらの手を伸ばすが、栄子は反射的に下がりそれを避けた。
不機嫌そうな亭主の顔が見える。
しまった、と思いながらも何もなかったかの様に微笑み話を続ける。
「その妖は何をしているのですか?」
「髪の長い人型の妖だそうだ。なにやら誰かを探しているらしい。」
少し不機嫌そうにしながらも亭主は話を続ける。
「……。」
(まさか…。)
「なにやらひどく男前だとかいう話だ。…人間離れした動きから妖だろうという話…だが。…やはり、顔色が悪いんじゃないかい?」
ん~?と栄子の顔を亭主は覗き込む。
「あっ…だっ大丈夫です!すみません…。」
「……。」
(困った…彼の可能性が高い、でも何か引っかかる…)
何か悩む栄子を亭主は不思議そうに見るが、すぐ何やら思いついたように目を細める。
「栄子ちゃん、その妖怪見たいかい?」
「えっ…」
すぐに反応する栄子を見て心の中で笑みを浮かべる亭主。
「実は僕何回か見てるんだ。部屋の窓からなんだけどね。だいたいの時間ならわかるけど…見てみる?運良ければ見れるかもよ?」
亭主はにっこり栄子に笑いかけた。