第48話 代償の大きさ
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「桃華、返答によっては…分かるな?」
それは魔界のホテルの一室。
数日ぶりに部屋に戻った桃華に掛けられた低くも冷たい声。
彼女はソファに腰掛け冷たい双方で自分を見ながら呟く男に息を飲んだ。
「…何の、事?…鴉。」
「…しらを切るか?それとも俺の見間違いか?」
「……。」
「どこにあいつを連れて行こうとした?俺は待ってろと言ったはずだが。」
しかも何日も空けてどこにいっていた?と、気だるそうにソファから腰を上げ、桃華と呼ばれた女性の側へ歩み寄る。
栄子と似ている女。
当初、鴉が近づいたのもそれが理由だ。
栄子を探していたからこそ出会った人間。
「…勝手に空けてごめんなさい。色々考え事してたの。…それに、彼女とはあの時少し話がしたくなって…。」
「あんな月の夜にか?…せいぜいあいつに怖がられたろうに。」
そういうなり桃華の腕を掴む。
しっかりとした腕の感触に温かな体温。
これも月夜を浴びると本来の姿になってしまう。
鴉の力によって左右される自分の体。
「…えぇ、怖がられたわ。その後、躯という妖怪にも切られたわ。」
怯え払われた手。
自分と似ていると言われる、目の前の男の愛する女に。
「ふふ、逆に月夜に救われもしたのか。」
「まぁ、ね。」
「桃華…。」
声が低くなる。
見上げれば黒真珠の様な瞳とぶつかる。
「狐から逃れられたのはおまえのおかげだ。今回は多めに見てやる。…だが勝手な行動は慎め、次はないぞ。」
「……わかったわ。」
「いい子だ。」
威圧的なオーラは変わらないものの、優しい口調に前髪に落ちる軽い口付け。
踵を返す彼の背を見ながら、桃華はそっと自身の前髪に触れた。
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シャワーの音がざぁざぁと鳴り響く
それに当たりながら、身を縮め蹲る栄子の体。
震える体をただきつく抱きしめる。
顔に掛かるお湯のおかげで、涙を流しているのかさえ分からない。
感覚がない自分の体。
あの日からずっとこれは変わらない。
一人になれば思い出し胸が握りつぶされそうになる。
沢山の命の尊さを思い知る。
自身の体に納まりきらない命の悔やみ。
大き過ぎる代償。
鴉は秀忠
私と共に生きる為に人を食らう
欲だけに忠実に動く秀忠
怨念でも何でもない-…
彼は鴉であり秀忠自身
遠い記憶の中にある微かな記憶は鮮明に脳裏を駆け巡る-…
無知の自分を呪った所で何も変わらない
どうすればいいのか-…
そんな事-…
分かりきっているのに-…