第47話 戯言
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真っ暗な意識の中…
思い出すのは、あの頃-…
何度月が登ったのか…
彼と狐と月を見るくせがついた
なのに、満月を見上げた記憶は酷く少ない。
だから不思議だった…
共に見た記憶がないのに、脳裏に残る真っ赤な月。
はっきりしない靄がかかった曖昧な赤い月は夢か現実か。
指に感じる微かな痛みと切なげな彼の声。
視界が悪い。
頭に霧がかかる…
私の瞳は満月を見上げ、何か口ずさむ。
何度かそんな夢を見た
そして、あの日…
いつもより血の香りが鼻を刺したあの日。
彼の苦しそうな悲痛な声と
知らない男の低い声だけが聞こえた
はっきりしない脳裏に麻薬のように浸透する赤
また会える…
微かに聞こえた優しい声に目元が熱くなった…
現実と夢とが入り混じった走馬灯-…
あれは…
「…私はただ血を欲した…。」
懐かしい声が響けば視界が変わり、真っ暗な闇の中に立つ少年の姿が目に入る。
伏せがちの瞳を上げれば真っ赤なそれが栄子の視線を捕らえた。
「ひで…ただ…?」
それこそ栄子自身が良く知る姿。
真っ赤な瞳…
霧掛かる記憶がゆるりと開いて行く…
「私は半妖で、私はそなたの血を欲した。」
(-…血?私の…?)
「それは私の生きる糧となり、そなたには私の血を与えた…。」
それは一刻の間だけ自由に操れる力を持つのだと、彼は言う。
人の血液を啜る事でしか生きながらうことが出来ない半妖の自分。
本来ならば自身の血で人を一生意のままに操れる術さえ持つ種族でも、半妖故それを成すことはできない。
『吸血鬼』
そう彼は切なげに瞳を揺らし呟いた。
「さぁ、栄子…」
目の前の少年はかき消され変わりに現れる鴉という男…。
そう、秀忠の生まれ変わりだという男。
「後は私が教えてやろう。」
伸ばされる白い手。
「もう一度私の名を呼ぶが言い。」
男は瞳を細め口元に弧を描いた。