第46話 魔界統一トーナメント戦・続
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「俺が死ねば栄子も死ぬ。それが術者が受ける代償だ。」
鴉の言葉に心が痛む。
意識のない彼女に契約させた秀忠。
それはとても難しいこと…
本来なら成功するはずもない事、だ。
「俺を愛していたから、できた事だ。おまえもわかっていよう?」
「……。」
「栄子が本当に愛していたのは、俺だ。おまえじゃない。」
自然と植物の蔦に力が入る。
歪む鴉の顔。
「さぁ、殺せ。殺せるものなら。」
「蔵馬!!!!」
躯の悲痛な声が耳に響く。
「殺しはしない。」
金色の瞳が目の前の男を見据え揺れる。
それにさらに口角を上げる鴉。
「殺しはしない、だがおまえなら俺がここにいる時点でわかっていよう?」
なぜわざわざ呼び出すようなマネをしたのか。
「……なに?」
鴉の顔から笑みが消える。
「俺が意味のないことをするとでも?」
逆に酷薄に浮かぶ狐の笑み。
「ここは…、魔界だ。」
ピンっと指で弾き鴉の腕の付け根にそれを飛ばす。
「あっちではおまえの置き場所にも困れば、色々面倒だ。処分されても困る、からな。」
そういった面では魔界は広くて秩序もなく助かる、と狐は瞳を伏せる。
『邪念樹』
ターゲットに寄生し、寄生者が死ぬまで幻覚を見せ自身の一部として取り込み養分を食らう。
「おまえの必要な食料は俺が用意してやる。おまえに死なれては困るからな。」
冷ややかな狐の瞳に鴉の眉が微かに寄る。
「栄子が悪夢を見続けるのは仕方がない。それでもおまえの側にはやれない。…食料の女達は俺がその都度運んでやる。」
「……。」
「永遠に近いほど生きてくれ。命ある限り。」
これしか思いつかなかった。
栄子を側に置き、生きながらえさす方法は。
そしてここは躯の配下。
事情を知る彼女ならば鴉を処分することもない。
狐の出す煙幕が鴉を包んで行く。
その時だった。
植物の蔦から感じる衝撃と爆風。
同時に千切られたのだと気付き、瞬時に栄子を抱え背を向ける。
背に当たる強い風の衝撃。
仲間がいたのか…
舌打ちをしその煙幕が去るのを待った先に映るのは少し離れた場所にいる鴉の姿。
彼は不敵に笑う。
「…今日は引くとしよう。」
「……っ。」
「次は栄子が自ら俺の所へ来るんだ。おまえは何もする必要はない。」
「行かせはしない。」
「せいぜい、頑張るがいい。だが、忘れるなよ…蔵馬。」
「そいつは俺の嫁だ。そして…それが愛しているのは俺だけ、だ!」
響くのは男の狂ったような笑い声。
それが遠退いて行くのを聞きながら、狐の瞳はただ腕の中の彼女を見据え揺れていた。