第46話 魔界統一トーナメント戦・続
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「…予想通りだが、まさか直に来るとはな。」
目を細め面倒くさそうにしかし少し嬉しそうに瞳を細め言う躯。
その様子に気付きながらも栄子の視線はただ一点を見つめる。
「栄子よ、やっと私を呼んだな。」
男は嬉しそうに笑い、遠くから栄子を見据える。
「…ひで、ただなの?」
本当に?
「そうだ、生まれ変わったのだよ。栄子…。」
見た目とは異なる柔らかな眼差しを向けられ、距離はあれどゆっくりと手を差し伸べられる。
「栄子、惑わされるなよ。おまえの男の生まれ変わりなんてかわいいもんじゃないぜ?」
「……。」
「あいつの名前は鴉…だったか。あいつの中にすくうのは秀忠の怨念だ。」
躯は忌々しそうに唾を吐き捨て呟く。
違う…
怨念なんかじゃない…
「生憎この娘は俺の客でね。悪いがお引取り願いたい。」
そう言うも、爛々と光る躯の鋭い瞳。
言葉とは裏腹に彼女はやる気満々だ。
それに目の前の男は一瞬目を丸くするものの、すぐに笑みを零す。
「…勘違いするな。俺は無理強いは好きではない。」
ならばこの所業はなんなんだと…躯は眉を寄せ、鴉を睨む。
「迎えに来ただけだ、これ以上おまえらの側に置けん。来るかどうかは…」
再び視線を躯から彼女の腕の中にいる栄子に向ける。
偽りではない、知っている瞳…。
『お前次第だ、栄子。』
声が重なる。
鴉の粘着質な低い声と…
少し高い少年の懐かしい声…
「…!!」
「記憶を思い出し、俺を秀忠だと理解したのだろう?」
「…っ…」
ずきりと頭が痛む。
それに頭を押さえ顔が痛みで歪む。
寒くも無いのに躯に抱えられている体が勝手に震えだす。
それに異変を感じた躯は彼女を抱く腕に力を入れ、鴉を睨む。
「ふふ、俺とお前の絆は深い。お前は俺から逃げることは出来ない。」
声が遠のくのと同時に脳裏に回る新たな記憶。
それは頭の中でぐわんぐわんと音を立て走馬灯の様に回りだす。
「あぁっ…!!」
(頭が…割れる!!!)
「貴様、栄子に何をした。」
低くも凍えるような聞きなれた声が頭上から聞こえる、だけどそれも回る記憶の奥で微かに聞こえるだけ。
「何もしていない。俺と会えばこうなる…。自然な事だ。」
そう、あの時から-…
ゆらりと動く体。
木の上に立つ躯は、いきなり自分を押しかえす彼女に驚き、腕を掴む。
しかし、それをも弾き返す彼女の力に目を見開くと同時に、彼女の足元を見る。
宙に浮く体。
何もない空中をまるで地面の上を歩くかのようにゆっくりと動く栄子に躯は驚き、自身の行動を遅らせた。
「ま、待て!!」
伸ばした腕を避ける彼女の身体能力、そしてすうっと流れるように鴉に向かう彼女の体。
意識が無いのか。
がくりと頭を垂れたまま、体だけが動いている。
舌打ちと共に、木の上を飛び交い彼女の体を止めようとするが-…
掴もうとすればぶれる体。
なぜ?
それでも彼女を止めようとする躯に鴉の声が笑い声が響く。
「本当の妖怪にはよく効くものだ、な。毎回驚かされる。」
まやかし…
そのときになり始めて感じる自身の体の違和感。
栄子の姿だけでなく視界がぶれる。
「やはり…おまえだったのか-…」
部下の不明な死。
どんな魔法かと思えば原因は簡単なものだった。
「俺は元陰陽師の末裔だ、栄子の記憶になかったか?」
さも嬉しそうに笑い、自分の側に来た栄子の腰に手を回し自分の方へ引き寄せる。
「貴様…!!!」
火薬の香りと爆発に気をとられていた。
微かに香るこの香りは大昔に微かに覚えがある面倒なものだ。
甘く花の香りに似た…香。
ふらつく体、情けなくらしくない自分に叱咤するものの、どうにかして目の前の男から彼女を取返さなければと思考を巡らす。
「栄子と私は共にある。お前達ではない。」
そう言うと栄子の顎に手を掛け上に向かす。
「そうだろう?栄子?」
意識のない感情のない瞳。
未だ夢を見ているのかのように視点が定まらず薄く開く唇を鴉の長い指がなぞり、鴉の笑みを浮かべた唇が落ちる-…